電力会社10社の託送料金、最も割安は関西、割高は東北:動き出す電力システム改革(51)(2/2 ページ)
小売全面自由後に事業者が電力会社に支払う「託送料金」の水準が確定した。託送料金は電力会社の送配電ネットワークを利用して電力を供給するために必要なコストで、各事業者は2016年4月から新しい料金プランに反映させる。注目の家庭向けでは関西の託送料金が最も割安になる。
低圧の託送料金は高圧の2倍以上
小売全面自由化後の電気料金に大きな影響を与える託送料金の水準に関しては、事業者のあいだから「高すぎる」との声も上がっている。電力会社10社の申請内容に対して意見を募集した結果、153件の意見が寄せられた。中でも事業者の不満が大きいのは、企業向けの高圧や特別高圧に比べて家庭向けの低圧の託送料金が高い点だ。
10社の託送料金を単純平均すると、特別高圧が2.00円、高圧が4.08円であるのに対して、低圧は2倍以上の8.68円になっている。電力を個々の家庭まで配電するコストは企業向けと比べて高くなるのは当然のことだが、コストの配分方法に不透明な部分が多いとの指摘がある。
というのも、託送料金を決めるにあたって算出する「託送料金原価」は電力会社のさまざまな費用に分散している。その中から送配電ネットワークの維持・運営に関する原価を抽出したうえで、さらに低圧・高圧・特別高圧の原価に割り振る(図3)。電力会社が算出した原価に対して、電力取引監視等委員会が主要な項目ごとに妥当性をチェックするが、低圧・高圧・特別高圧の原価の配分は電力会社の申請のまま決まった。
このほかに小売全面自由化に伴って託送料金原価が大幅に増える要因もある。電力会社の送配電部門が安定供給のために費やす「調整力コスト」だ。需給バランスの調整が主な目的だが、従来は託送原価に含めていなかった費用が加わる。発電事業者と小売電気事業者は30分単位の需要と供給量を一致させればよく、実際の需給バランスを調整する役割は電力会社の送配電部門が担うことになるためだ。
需給調整に必要な電力を確保するコストが増える見通しで、10社が申請した増加額は年間1145億円にものぼる(図4)。この調整力コストの増加分に関しては電力取引監視等委員会が各社の申請内容をチェックして、合計388億円の減額を求めている。各社が過剰な調整力コストを申請した結果である。
調整力コストは実績値をもとに事後評価することが可能であり、他の原価と合わせて国による毎年度のチェックが望ましい。2020年4月に実施する発送電分離では、電力会社の発電・送配電・小売事業を別会社に分離して、各事業のコストを明確に分ける方針だ。それまでのあいだは各地域の小売電気事業者による競争状態を確認しながら、定期的に託送料金を見直す必要がある。
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