世界の70%の情報が集積する街に、「再利用水」で躍進したデータセンター誘致:省エネ機器(2/2 ページ)
多くのデータセンターが集積し、全世界のインターネット・トラフィックの約70%が流れ込んでくるという米国バージニア州ラウドン郡。データセンターの集積地として同郡が躍進した背景には、環境規制に対応するための水の再利用への取り組みがあったという。
排水規制が強まる米国
2000年代ごろから米国では、米国環境庁(EPA)による環境規制が強まり、排水に関する厳密な規制が敷かれはじめた。ラウドン郡の北部にはポトマック川という河川が流れている。20世紀初頭に日本から米国に贈った桜の木が植林されたことで知られる河川だ。
このポトマック川水源への排水量も厳しく規制されるようになり、同時に水の再利用を促す動きも進んだ。2008年には地元のラウドン郡水道局がバージニア州水再利用規制を受け、再利用水を作る浄化設備を建設した(図4)。そして、この再利用水がデータセンターの誘致に貢献することになる。
再利用水で環境規制に対応+コスト削減へ
データセンター運用のエネルギーコスト低減手法として、水による冷却を行い空調エネルギーのコストを削減するという方法がよく用いられる。ラウドン郡のデータセンターも同様で、運営企業は年間を通じて水冷却に多くのコストを支払っている。ラウドン郡水道局の運営は再利用水設備の建設後、こうしたデータセンターの水冷却用に再利用水の提供を開始した。
データセンターを運用する企業から見れば、価格が安い再利用水を使うことで水冷却コストを従来より抑えられるというメリットがある。「運営企業は冷却水を従来の半分のコストで調達できるようになった。6万平方メートルのデータセンターで年間5万ドルほどのコスト削減効果が見込める」(ビショフ氏)。
再利用水を提供するラウドン郡水道局の運営に、バージニア州などからの税金による補助は行われていない。同局が得る水の使用料金や基本料金が、そのまま運営費および設備改善費として利用される仕組みになっている。同局の視点から見れば水利用に対する環境規制に対応しながら、同時に再利用水を提供することで収益も得られるようになった。
こうしてラウドン郡では環境規制に対応しながら、データセンターの運営企業に対して冷却水を安価に提供できる仕組みが整った。多くの情報が集積し安価な電力を購入できるという以前からのメリットに加え、冷却水の調達についてもコストメリットも生まれたことで、データセンターの誘致が進んだという(図5)。
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