自由化後の電気料金のベースが決まる、家庭向けの接続料は6〜9円台:動き出す電力システム改革(53)(2/2 ページ)
小売電気事業者が電力会社の送配電ネットワークを利用するために支払う「託送料金」の単価が確定した。これを受けて各事業者は2016年4月から提供する家庭向けの料金メニューを設定する。新たに決まった託送料金は従量部分の単価が一律で、従来のような3段料金制をとる必要はなくなった。
スマートメーターによる「実量契約」も始まる
小売全面自由化に合わせて、月額固定の基本料金の決定方法を変えることもできる。基本料金は需要家が使用できる電力の最大値を「契約電力」として、kW(キロワット)単位で単価を決める。契約電力の決め方は4種類あって、家庭向けではサービスブレーカー(SB)の容量で決定する方式が一般的だった(図3)。
ただし関西・中国・四国・沖縄の4地域では「SB契約」はなく、家庭向けの託送料金は実際に使用した最大電力で計算する「実量契約」を適用する。そのほかの地域でもスマートメーターを導入した家庭に対しては実量契約を適用することが可能なため、小売電気事業者が実量契約の料金プランを提供するケースも出てくる。
すでに企業や自治体が利用する高圧(500kW未満)の電気料金と託送料金には実量契約を適用している(図4)。需要家は毎月の最大電力を抑制する必要がある半面、節電対策を継続して実施することによって基本料金を引き下げる効果が期待できる。家庭向けにも実量契約を導入すれば、節電意欲を高めることにつながる。
家庭向けを中心にした低圧の託送料金と同時に、企業向けの高圧と特別高圧の託送料金も2016年4月に改定する。ただし現行の単価から若干の変更にとどまり、電気料金に与える影響は小さい。
東京電力の託送料金を見てみると、高圧の基本料金が1kWあたり550.80円から545.40円へ5.40円安くなり、電力量料金も1kWhあたり2.32円から2.30円に下がる(図5)。その代わりに電力の使用量が大きい高層ビルや大規模な工場が利用する特別高圧の託送料金は値上げになる。
託送料金が確定したことで、小売電気事業者は年末から2016年の初めにかけて家庭・商店向けの自由料金メニューを相次いで発表する見通しだ(図6)。1月から契約変更の受付を開始できるため、4月の自由化に向けて激しい顧客獲得競争が繰り広げられる。
対抗する電力会社の小売部門も各種の自由料金メニューを設定する一方、現行の標準メニューをもとに「経過措置約款」の料金メニューを3月末までに国へ届け出る。経過措置約款の単価は従来と同じ金額に設定する見通しだが、値下げすることも可能である。
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