40億円を投じてバイオマス発電、山林に残る木材から1万2000世帯分の電力:自然エネルギー(2/2 ページ)
地域の森林で発生する未利用の木材を生かしたバイオマス発電所の建設計画が山形県で相次いで動き出した。南部の米沢市では年間8万トンの木材を燃料に利用する発電所が2017年末に運転を開始する予定だ。地元の木材産業が燃料の供給に協力して、県内の4地域に木質バイオマス発電が広がる。
国の目標は2020年に間伐材を30%活用
農林水産省によると、全国の山林に残された間伐材などの総量は2000万立方メートルにものぼり、そのほとんどが未利用の状態にある(図3)。さらに製材工場や建築現場で発生する端材なども一部は未利用のままだ。農林水産省は2010年12月に「バイオマス活用推進基本計画」を策定して、間伐材の利用率を2020年までに30%に引き上げる目標を掲げて対策を進めている。
グリーン・サーマルが展開する木質バイオマス発電の事業モデルは、間伐材を中心に建築材などもリサイクルで調達する(図4)。間伐材から作った木質チップを発電用の燃料に使いながら、建築材などのリサイクル木材は発電の前にチップを乾燥させる燃料として利用する場合が多い。
このモデルを実施した最初のプロジェクトは、福島県の会津若松市で2012年7月に運転を開始した「グリーン発電会津」の木質バイオマス発電である(図5)。続いて大分県の日田市でも2013年11月に「グリーン発電大分」が同様の木質バイオマス発電を開始している。2カ所とも発電能力は5.7MWである。米沢市に新設する発電所は3番目のプロジェクトになり、発電能力は既設の2カ所を1割ほど上回る。
山形県内では北西部の庄内地域で住友商事グループが50MWの大規模な木質バイオマス発電所を酒田市に建設する計画を進めている。このほかに北東部の最上地域では木質バイオマスからガスを精製して発電する設備が建設中だ。中部の村山地域でも地元の企業が中心になって木質バイオマス発電所を建設する計画が始まった。
それぞれ2016年後半から2018年前半にかけて運転を開始する予定になっている。置賜地域の米沢市で木質バイオマス発電所の建設プロジェクトが動き出したことで、県内の4地域すべてで間伐材を利用したバイオマス発電を実施する体制になる。
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