燃料電池ドローンが登場、水素が飛行時間を数時間レベルに伸ばす:蓄電・発電機器
英国のエネルギー関連技術企業であるIntelligent Energyは、燃料電池を搭載したドローン(無人飛行機)の試作機を開発したと発表した。米国ラスベガスで開催される民生機器の展示会「CES2016」に試作機を出展するという。
英国Intelligent Energy(インテリジェントエナジー)は、燃料電池の開発や研究を進めるエネルギー技術企業だ。燃料電池自動車(FCV)や民生機器向けや分散型電源システム用のなどの燃料電池について研究開発を進めている。同社グループでは、25年以上にも及ぶ研究開発により、燃料電池についての多くのノウハウや特許を持ち、1000以上の特許と400以上の特許ファミリーを保有しているという。
これらの燃料電池のノウハウを生かして開発したのが今回の、燃料電池搭載ドローンだ(図1)。
今回の同社の開発した燃料電池搭載ドローンでは、燃料電池をメインのモーターの駆動用に使うのではなく、航続距離を伸ばす「レンジエクステンダー」の役割で搭載した。現在のドローンは市場が急成長する一方で、電池の問題で航続距離が短かったり、電池の充電時間が長すぎたりして、利用範囲の制限を受けている状況だ。
同社が開発したドローンでは、バッテリーと軽量の燃料電池スタックを組み合わせることで、大幅に航続時間を伸ばし、充電時間を短縮することに成功したとしている。現状では20分程度の航続時間を、数時間程度に伸ばすことに成功した他、1〜2時間かかっていた充電時間をわずか2分に短縮することができたという。これらによりドローンの非稼働時間を大幅に削減することが可能になるとしている。
同社ではこの10年間、ボーイング社の研究部門であるBoeing Phantom Worksと共同で、商業ベースでの燃料電池飛行機を使った有人飛行の実現に向けた研究開発を進めてきた。また、エアバスと共同で燃料電池を補助動力装置についても研究開発を進めてきた。
14カ月前には、燃料電池とバッテリーのハイブリッドシステムでドローンを飛ばす試験飛行も行っている。テストは2つのパターンで行っており、1つは燃料電池のみの動力で飛ばす形、もう1つは燃料電池と通常バッテリーを組み合わせたものだ。またカメラについても安定した映像で途切れなく撮影することができたという。
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