小売電気事業者が100社を突破、ケーブルテレビ最大手がグループ24社を一挙に:電力供給サービス(2/2 ページ)
2016年4月から家庭向けに電力を販売できる小売電気事業者の登録数が100社を超えた。ジュピターテレコムが24社のグループ会社を登録してテレビ・通信・電話と組み合わせたサービスを首都圏中心に展開する。大阪いずみ市民生協は再生可能エネルギーを多く含む電力を組合員に販売する計画だ。
大阪の生協も再エネ主体の電力を小売
J:COMグループ以外では6社が小売電気事業者の審査を通過した。この中で注目を集めるのは大阪いずみ市民生活協同組合である。大阪南部の25市町村を対象に、50万世帯の組合員に向けて電力を販売する(図4)。再生可能エネルギーを多く含んだ電力を供給する点が特徴で、料金プランは1月に発表する予定だ。
大阪いずみ生協は「原発に頼らない再生可能エネルギーによる電力」の普及を目指して、みずから関西圏にメガソーラーを建設して再生可能エネルギーの導入量を拡大してきた。合わせて他社からの調達も進めて電力の販売量を増やす方針だ。組合員に販売する電力は大和ハウスグループのエネサーブから調達する。
エネサーブは関西を中心に2004年から企業向けに電力を提供している。自社で火力発電所を運転するほかに、再生可能エネルギーによる電力の買取を積極的に推進している。企業に「グリーン電力証書」を販売する方式でCO2(二酸化炭素)の排出量を削減する(図5)。
こうした事業活動を通じて、電力の供給に伴うCO2排出量を低く抑えることができる。2014年度の実績では全事業者のCO2排出係数の平均値が0.579(CO2換算キログラム/キロワット時)に対して、再生可能エネルギーの買取分を含めた調整後の排出係数でエネサーブは0.206と半分以下になっている。同じ量の電力を消費してもCO2排出量が半分以下に収まる状態だ。
J:COMと大阪いずみ生協のほかに、北海道のLPガス会社、鳥取県と茨城県のテレビ運営会社、東京都でエネルギー管理サービスなどを提供する2社が小売電気事業者の審査を通過した。それぞれ既存の事業と組み合わせて家庭向けの電力販売に乗り出す。
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