天然ガスの普及を進める東京ガス、福島県に初の供給設備:エネルギー供給
LNGは石炭や石油と比べて燃焼時に発生する温暖化ガスの量が少なく、今後のエネルギー源としての利用拡大が期待されている。経営方針としてLNGの普及・拡大を掲げる東京ガスは、福島県いわき市に新たな天然ガス供給設備の建設した。
東京ガスはこのほど堺化学工業(大阪府堺市)の小名浜事業所(福島県いわき市)内で建設を進めていた「小名浜サテライト」の工事を完了し、小名浜中圧ラインを通じて、天然ガスの供給を開始した。東京ガスが福島県で自社運営のサテライトを建設し、天然ガスを供給するのは初となる(図1)。
小名浜サテライトは、既存ガス導管からの延伸が困難な地域に天然ガスを供給するためのガス製造所だ。サテライトまではLNG(液化天然ガス)をタンクローリーで輸送し、現地で貯蔵したLNGを気化してガス導管により供給する。東京ガスは、袖ケ浦LNG基地からLNGを出荷・輸送し、同サテライトで気化した天然ガスを、新たに建設した総延長3.9km(キロメートル)のガス中圧導である小名浜中圧ラインに送出する。既存のガス導管では
サテライトの敷地面積は約3430平方メートル。タンクローリーの受入口(フレキシブルホース×3口)、LNG貯槽(縦置円筒型1000キロリットル×1基)、LNG気化器(縦型温水式6.4トン時×2基)などの主要設備を備えた(図2)。
天然ガスは、石油や石炭に比べて燃焼時の二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)の排出量が最も少なく、硫黄酸化物(SOx)の排出もほとんどない環境負荷の小さい化石燃料であり、「エネルギー基本計画」においても「役割を拡大していく重要なエネルギー源」と位置付けられている。
東京ガスグループは、「チャレンジ2020ビジョン」で「天然ガスの普及・拡大」を掲げており、今後も首都圏における天然ガスの普及・拡大を地域密着で進めていくとともに、LNG供給を全国へ拡大する計画だ。2012年10月には北海道ガスへ外航船によるLNG供給を開始。また、西部ガスとLNG売買契約を締結し2014年10月に供給を始めている。また、インフラ拡充として2020年までに日立基地2号LNGタンクの建設、日立〜鹿島幹線の建設をいずれも目指すほか、2020年代の日立〜小名浜幹線の建設を目指して需要動向やルート選定などより詳細な調査を進めている。
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