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50億円を投じて年間6億円削減、セメント製造の熱利用スマートファクトリー(2/2 ページ)

宇部興産は福岡県の苅田セメント工場に出力1万2650キロワットの排熱発電設備を導入。電力の自給率を約30ポイント高めた。セメント製造時の高温排熱で蒸気を作り、蒸気タービンを回す。固定価格買い取り制度(FIT)を利用しないエネルギーの有効利用の一例だ。二酸化炭素の排出量も約10%減る。

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2カ所の排熱を発電に利用

 苅田セメント工場は、普通セメントと高炉セメントを原料から一貫生産している。塊状のセメント中間製品「クリンカ」を年間160万トン生産する能力を備える*1)

 セメント製造は順に原料工程、焼成工程、仕上げ工程の3つを経る。原料工程では石灰石や粘土などを粉砕、乾燥、混合してセメントの原料を作る。焼成工程では原料をプレヒーターで加熱し、キルンで1450℃に加熱する。ここで化学反応が起き、クリンカを得る。その後、クリンカクーラーで冷却し、仕上げ工程に運ぶ。仕上げ工程ではクリンカに石こうを加えて粉砕し、セメントが完成する。

 苅田セメント工場では焼成工程に改善を加えた。「従来は1本のキルンから排熱をプレヒーターに送っていたものの、熱を十分に利用できていなかった」(同社)。そこで2系統の熱を利用して効率よく発電するシステムを導入した(図4)。図4の左下で炎が吹き込んでいる水平の管がキルンだ。

*1) 複数企業による国内のセメント生産高は約5670万トン(2014年度)。


図4 生産設備と排熱発電設備の関係 出典:宇部興産

 まずクリンカクーラーから送られた360℃の排熱を、エアクエンチング(AQC)ボイラーに通じて高圧蒸気を取り出し、プレヒーターボイラーに通じる。プレヒーターからは400℃の排熱をプレヒーターボイラーに送る。2系統の蒸気を使ってタービン1基を回し、電力を得る(図5)。このようにして化石燃料の使用量を低減し、電力の自給率を高めた。


図5 排熱発電設備・タービン発電機の外観 出典:宇部興産

【更新情報】 記事公開後、図3を追加しました(2016年1月13日)。



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