小売電気事業者に地域特化型の新電力も、登録数は累計130社に拡大:電力供給サービス
家庭向けに電力を販売できる小売電気事業者が新たに11社増えて、累計で130社に達した。申請中の事業者を加えると235社にのぼる。再生可能エネルギーの地産地消を推進する地域特化型の新電力の登録も増えてきた。家庭で使う電力の選択肢が広がる。
小売電気事業者の登録を審査する電力取引監視等委員会は1月15日に11社を適格と認定した(図1)。登録数は累計で130社になり、さらに14日の時点で105社が申請を出して審査を待っている状況だ。家庭向けの小売自由化が始まる4月1日までに事業者の登録数が200社を超えることは確実になった。
新たに審査を通過した11社の中には、地域特化型の電力事業を展開する会社が3社含まれている。鹿児島県鹿児島市の「鹿児島電力」、岩手県北上市の「北上新電力」、茨城県水戸市の「水戸電力」である。いずれも地域内で作った再生可能エネルギーの電力を中心に地産地消のサービスを特徴にしている。
水戸電力は水戸市に本社がある新電力のスマートテックが設立した会社で、プロサッカークラブの「水戸ホーリーホック」が出資して地域との一体感を高めている(図2)。水戸市内と近隣地域の事業所や工場などを対象に、2015年12月に電力の販売を開始した。2016年4月から家庭向けの電力も販売する予定だ。
北上新電力は全国各地でメガソーラーを展開するNTTファシリティーズが設立した。北上市と協定を結んでエネルギーの地産地消を推進する。地域の再生可能エネルギーを買い取って、市役所の庁舎や防災拠点などに電力を供給するサービスから開始した(図3)。BEMS(ビル向けエネルギー管理システム)や蓄電池を使って電力の消費量を抑制する役割も担う。
3社の中で鹿児島電力だけは現在のところ供給実績がないが、すでに家庭向けの電力の事前予約を開始した。鹿児島県内を中心に、九州電力よりも安い料金で提供する方針だ。再生可能エネルギーの電力を増やすため、固定価格買取制度の価格よりも0.5〜1円高く買い取るサービスを実施している。
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