燃料電池車「MIRAI」に衛星通信機能、トヨタがクルマの「つながる化」を加速:電気自動車
将来は自動車に衛星通信機能を搭載することが一般的になるかもしれない。トヨタは米国で開催されているモーターショーで、米Kymate社の技術を活用した衛星通信機能付きの燃料電池車「MIRAI」の実験車を公開した。
トヨタ自動車(以下、トヨタ)は「北米国際自動車ショー2016」(一般公開日:2016年1月16〜24日、米国ミシガン州デトロイト)において、米Kymeta社の衛星通信技術を活用した、燃料電池自動車「MIRAI(ミライ)」の実験車を参考出展した(図1)。
近年、自動車をインターネットと接続することで、新しいサービス展開を図る動きが進んでいる。トヨタも今後、車載通信機の搭載率を高めていくなど、こうしたクルマの「つながる化」に向けて取り組みに注力している。将来は大容量でデータ転送速度に優れた衛星通信の活用も視野に入れているという。
衛星通信を利用するメリットには車両へ大量のデータを配信できる他、カバーエリアが広く、国や地域をまたいで同じ規格で自動車のつながる化を推進できるといった点が挙げられる。災害などの緊急時でも安定した通信が確保しやすい。
一般的な衛星通信アンテナは衛星を捕捉するために、パラボラアンテナのような曲面形状のアンテナを設置する場合が多い。しかし将来、多くの一般車に衛星通信機能を搭載すると想定した場合、これは現実的とはいえないだろう。Kymeta社は液晶技術とソフトウェアを用いて電子的に衛星を補足できる独自技術を有しており、公開したMIRAIの実験車には同技術を活用して平面かつ小型化な衛星通信装置を搭載しているのが特徴だ(図2・3)。
トヨタはKymeta社と2013年9月より、大量のデータを車両に衛星配信することを想定した車載用平面アンテナの共同研究を開始。現在トヨタは自動車向けアンテナの開発・試験における独占権を得て、Kymeta社に試験車を貸与している。Kymate社は既に1万キロメートル以上の走行評価試験を実施しているという。
今回参考出展した試作アンテナを搭載するMIRAIは、こうした自動車への衛星通信機能の搭載に向けた両社の取り組みの成果を示したものだ。トヨタは2016年1月にファンドを通してKymeta社へ500万ドルの出資を行っており、今後も開発を加速させていく計画である。
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