太陽光発電の買取価格は25円へ、住宅用も30円前後まで下がる:自然エネルギー(2/2 ページ)
政府は2016年度の買取価格の検討に入った。焦点になる太陽光の価格はさらに引き下げる方針だ。非住宅用は現行の27円を25円に、住宅用は33〜35円を30円前後まで下げる可能性がある。風力・中小水力・地熱の買取価格は据え置くが、バイオマスは種類によって変更も考えられる。
住宅用は設備稼働率が12%から14%へ
同様に住宅用の買取価格も下がる。発電システムの導入費用は1kWあたり1万円ほど安くなっている(図4)。さらに太陽光パネルやパワーコンディショナーの性能向上によって設備稼働率が高くなった。従来の想定では12%だったが、直近のデータでは14%近くまで上昇している。住宅内で消費した後の電力の余剰率(売電率)も想定値の60%から70%に高まり、売電収入が大幅に増える傾向にある。
以上の3つの要因が重なり、住宅用の買取価格を大幅に引き下げる可能性が出てきた。かりに設備稼働率を14%に設定した場合には、その効果だけで4円程度の価格低下につながる。そのほかの要因を加えると5円以上の引き下げも考えられる。
2015年度から住宅用の買取価格は出力制御の必要性によって33円と35円に分かれたが、それぞれ2016年度には30円前後まで低下してもおかしくない状況だ。ただし政府は太陽光発電のうち住宅用は引き続き促進する方針のため、導入意欲を損ねない程度に収める必要がある。
太陽光を除く4種類の再生可能エネルギーに対しては、2016年度も買取価格を据え置く方向だ。風力と地熱は実績データが少ないこともあって変更する根拠が見あたらない。中小水力は発電方式が数多くあるために、費用のバラつきが大きく、年度による比較がむずかしい。
バイオマスだけは燃料費の変動があり、燃料の種類によって買取価格を変更することも考えられる。未利用木材と廃棄物で燃料費の上昇が見られる一方、メタン発酵ガス化発電ではシステム費用と運転維持費ともに従来の想定値を大きく下回っている。ただしバイオマスでも実績データはさほど多くないため、2016年度も買取価格を据え置くのが妥当だろう。
今後は太陽光を中心に買取価格の水準を引き下げながら、発電事業者の導入意欲を阻害しないように、固定価格制から変動価格制へ移行していく。政府が検討中の価格決定方式は4種類ある(図5)。このうち非住宅用の太陽光には、コスト効率が最高水準の発電システムを前提にした「トップランナー方式」を採用する。メガソーラーのような大規模な発電設備には「入札方式」を導入する方針だ。
このほかに将来の買取価格を低減する前提で、あらかじめ将来の目標値を設定する方式も検討中である。住宅用の太陽光と風力に適用する予定だ。変動価格制への移行は2016年度の買取価格と合わせて、3月までに委員会で最終案を固める。ただし法律の改正が必要になることから、実施は2017年度からになる可能性が大きい。
関連記事
- 地域密着型のバイオマス発電が拡大、太陽光の買取価格は下がり続ける
2016年は再生可能エネルギーの流れが大きく変わり始める。これまで急速に伸びてきた太陽光発電は買取価格の低下や出力制御の対象拡大によって開発計画が減少する見通しだ。地域の資源を活用したバイオマス発電が有利な条件をもとに拡大する一方で、風力・中小水力・地熱発電には課題が残る。 - 再生可能エネルギーを最大限に増やす、固定価格買取制度の改革案
太陽光発電を中心に急速に拡大を続けてきた再生可能エネルギーの市場環境が大きく変わる。従来の固定価格による買取制度を改正して、太陽光や風力には変動価格の新方式を導入する見込みだ。発電設備の認定時期も見直すほか、買取義務を小売電気事業者から送配電事業者へ変更する。 - 日本を変えるエネルギー革新戦略、政府が3月にも公表
国全体のCO2排出量の削減目標を定めた2030年に向けて、政府は「エネルギー革新戦略」を策定して実行計画を推進する。省エネ、再エネ、エネルギー供給システムの3分野をテーマに、省エネ基準の義務化や固定価格買取制度の改革、IoTを活用した遠隔制御技術の開発などを進めていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.