太陽光発電が増えても電力を安定供給、自動給電システムを中国電力が刷新:電力供給サービス(2/2 ページ)
中国電力は気候によって出力が変動する太陽光発電や風力発電の拡大に備えて、地域の需給バランスをコントロールする自動給電システムを刷新した。再生可能エネルギーの発電量と需要の予測精度を向上させたほか、需給バランスの調整に必要な電力を事前に確保できる新機能も追加した。
太陽光発電の接続可能量が増える
中国電力が1年間に供給する電力量のうち、出力を調整しやすいガス火力の比率は25%ある。一方で太陽光や風力を含む再生可能エネルギー(新エネルギー)の比率も2014年度に3%まで拡大した(図4)。管内では大規模な太陽光発電所の建設プロジェクトが目白押しで、今後も再生可能エネルギーによる発電量が増え続けることは確実だ。
2015年1月から全国の7つの地域で太陽光発電設備の出力制御ルールが変更になった。原子力発電所を全面的に再稼働させることを想定して、1年間のうち電力の需要が最も小さくなるゴールデンウイークでも、供給力が需要を上回らないように決めたものである。中国電力の管内では出力が50kW(キロワット)以上の発電設備に限定して、年間に360時間まで出力を抑制することができる(図5)。
今後も太陽光発電設備が増加して送配電ネットワークに接続できる許容量を超えた場合には、無制限で出力を抑制することも可能になる。この許容量を「接続可能量」と呼び、電力会社の電源構成によって年度ごとに見直す決まりだ。最近は「30日等出力制御枠」という名称を使い始めた。
中国電力の管内では合計660万kWまでの太陽光発電設備を接続することが可能で、2015年10月末の時点で129万kWの余裕がある(図6)。当面は太陽光発電設備を増やすことができるため、気候の変化に対応した需給バランスの調整能力がますます重要になってくる。
もともと中国電力の接続可能量は558万kWだった。「島根原子力発電所」の1号機の運転を2015年4月に終了したことなどを理由に、2015年度から660万kWまで拡大した。接続可能量を設定している7つの地域の中で、中国電力だけが太陽光発電設備の接続可能量(30日等出力制御枠)を増やしている(図7)。
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