原発再稼働を待つ電力会社、新規参入組の低価格プランに挑む「最初の一手」:電気料金の新プラン検証シリーズ(12)(4/4 ページ)
小売全面自由化に向け、電力会社各社が新料金プランを続々と発表している。料金値下げの切り札となる原発の再稼働状況を見守りつつ、「今より安くなる」を掲げて電力会社に挑む新規参入事業者が続々と登場する中、各社はどんな料金プランを設定したのか。
九州電力、電気使用量が多いほどお得に
九州電力が展開する新料金プランの名称は「キレイライフプラス」。「スマートファミリープラン」「電化でナイト・セレクト」「スマートビジネスプラン」の3つのプランを用意した。「スマートファミリープラン」は電気料金の使用量が多い家庭ほどお得になるプランだ。301kWh以上の電力料金単価が従来電灯Bより1.08円/kWh安くなる。300kWh以下の料金は従来電灯Bと同じだ。月の平均電力使用量が350kWh以上の家庭であれば、従来電灯Bよりメリットが生まれやすくなっている(図7)。500kWh以上使う家庭であれば、年間約2500円安くなる計算だ。
店舗や商店などに向けたプランであるスマートビジネスプランも同様で、こちらも電力使用量が多いユーザーほどお得になる。従量電灯Cで10kVA契約、月平均使用量が550kWhを超えるユーザーはメリットがある。「電化でナイト・セレクト」はオール家電の家庭に向けたプランで、夜間と休日の料金が割安になる。なお、このプランのみ契約方式はスマートメーターを活用する実量契約となっている。
九州電力も独自のポイントサービス「Qピコ」を展開する。毎月の使用電力量などに応じてポイントがたまる仕組みで、九州の特産品や旅行券などが当たる抽選に充てることができる。ポイントサービスに加え、暮らしまわりの困りごとをサポートする「九電あんしんサポート」も提供していく。
価格競争は今後も続く
本稿で扱った6社に加え、既に紹介した東京電力、関西電力、中部電力の新料金プランを見ても、やはり電力会社からすると利幅の大きい使用電力量が多い家庭ほどお得になるプランが多い。この層については電力会社以外の新規参入事業者にとってもメインのターゲットとなるだろう。事業者によって幅はあるが、各社とも現行料金より3〜10%程度安くなるという料金プランを掲げている。電力会社としてはある程度の顧客離れは避けられないはずだ。
しかし現時点では新旧電力ともに、まだ「最初の一手」を見せた段階だ。新規参入組は「電力会社より安くなる」をアピールポイントにしている。しかし電力会社がこれに合わせて原発の再稼働状況などを見て値下げに踏み切れば、その優位性も低くなる。こうなればさらなる値下げや付加価値サービスの強化といった「次の手」を打つ必要があるだろう。顧客獲得に向けた激しい競争は今後もしばらく続きそうだ。
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