全国で火力発電の高効率化が進む、電力の安定供給とCO2削減の両立へ:電力供給
2016年4月にスタートする電力の全面自由化を前に、電力会社が電力の安定供給を目指して火力発電所の高効率化や新発電所の試運転を進めている。東北電力と九州電力は既設火力より高効率な設備の開発を進め、効率的な発電とCO2排出量削減の両立を目指す。
東北電力は2020年に営業運転開始を予定している能代火力発電所3号機(秋田県能代市、出力60万キロワット)の工事計画の届出を経済産業省に対して行い、新設工事を着工した。届け出は電気事業法に基づくもの。
能代火力発電所は1993年に1号機(同60万キロワット)、翌年に2号機(同60万キロワット)がそれぞれ営業運転を開始して以来、ベース電源として電力の安定供給に貢献してきた。3号機は、自社火力設備の経年化が進んでいる状況や、2016年4月に開始される小売全面自由化なども踏まえ、計画的に経年火力の代替を進めるとともに、経済性のある火力電源を新増設する一環として建設することにしたもの(図1)。
3号機の発電方式は汽力方式で、超々臨界圧(USC)方式の発電設備を採用することで1、2号機より高い熱効率、約44.8%(低位発熱量基準)を見込む。また、亜歴青炭の使用を拡大する計画で、これらにより「高い経済性とCO2排出量の低減を両立できる」と同社はみている。今後、工事に向けた諸準備を進め、2月から本格的な建設工事を開始、平成29年3月に機械工事をスタートする。営業運転の開始は2020年6月を計画している。
一方、九州電力は大分市で建設中の新大分発電所3号系列(第4軸)がこのほど、試運転による発電を開始したと発表した。2013年7月の着工以来、土木建築工事、機器据付工事を進めてきたもの。今後は、順次出力を上昇し、機器の調整、性能確認、法令に定められた各種検査などを行い、2017年7月から営業運転を開始する予定だ。
新発電所の出力は45万9400キロワット。発電方式は複合発電(コンバインドサイクル)で、燃料として液化天然ガスを使用する。同社では「3号系列(第4軸)は、最新鋭で高効率の発電設備であり、営業運転開始により、電力の安定供給、エネルギーの有効利用及びCO2削減に寄与できるものと考えている」としている。
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