複雑なスマートハウスの仕組み、専門家を認定する資格制度が登場:スマートハウス(2/2 ページ)
日本は2030年に向けてさらなる省エネを進める必要がある。住宅分野の省エネに向けて注目されているのが、家庭内のエネルギーを最適に制御する「スマートハウス」だ。家電製品協会はスマートハウスのさらなる普及に向けた人材育成を目的に、2016年から資格制度を新設する。
「スマートマスター」には何が求められるのか
一口に「省エネを可能にするスマートハウス」といっても、実現するための機能や性能を具体的に見ていくと、さまざまな分野にまたがっていることが分かる。
例えばスマートホームを実現する1つの手段として、電力を“つくる”太陽光発電設備、“ためる”蓄電池、これらの電力を最適にマネジメントするHEMSの利用なども進んできた。しかしこうした製品およびその使い方だけでなく、省エネには断熱性能なども重要な指標となるため、住宅そのものの構造も深くかかわってくる。さらに今後は電力会社が取り付けを進めているスマートメーターやHEMSを活用して、高齢者の見守りといったさまざまなサービスも登場してくるだろう。
家電製品協会が認定するスマートマスターは、このようにスマートハウスに関連するさまざまな技術や製品、サービスの動向を理解し、一般消費者の個々ニーズに合ったスマートハウスの構築を提案できる知見が求められる(図3)。
2016年9月に第1回の試験を開始し、以降年2回(9月、3月)のペースで実施していく。試験科目は「スマートハウスの基礎」と「家電製品」についての2種類。受験料は2科目受験で9230円、1科目受験の場合は6180円となる。資格は発行後5年有効で、更新は簡易試験や講義の受講などで行えるようにする計画だという。なお、既に家電製品協会が認定試験を実施している「家電製品総合アドバイザー」もしくは「家電製品総合エンジニア」の資格を保有している場合、家電製品科目の試験は免除となる。
今後は同年1月26日に同時に学習用テキストとして『スマートマスター インテリジェント化する家と家電のスペシャリスト』(NHK出版、税込4104円)を販売し、スマートマスターの育成カリキュラムなどの提供も行っていく予定だ(図4)。将来は資格のグレードを複数設定したり、特定分野の専門性を高めた資格を新設したりなど、スマートハウス関連の技術動向に合わせて柔軟に対応していくという。
年間の想定合格者数については「やってみないと分からないが、年間約1000人を目安していきたい」(同協会)としている。
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