「超スマート社会」を国家戦略で実現へ、エネルギーバリューチェーンを最適化:エネルギー管理(2/2 ページ)
日本の科学技術政策の基本戦略をまとめた「第5期科学技術基本計画」を内閣が閣議決定した。全世界で進むIoTによる技術革新を取り込みながら、情報社会に次ぐ「超スマート社会」を実現する構想だ。エネルギーの好循環を図るバリューチェーンの最適化をはじめ11分野のシステムを整備する。
第5の波を「Society5.0」で呼び起こす
このほかの実行項目を含めて、従来から政府がエネルギー政策の目標として掲げていたものが多いが、改めて2020年度までの科学技術基本計画に盛り込んだ意義は大きい。政府は2030年に向けた「エネルギー革新戦略」を3月にも公表する方針で、その中で詳細な実行計画をとりまとめる予定だ(図3)。
11分野のシステムのうち、エネルギー関連でもう1つ重要なものが「地球環境情報プラットフォーム」の構築である。衛星・海洋・地上に設置したセンサーから観測データを収集して、温室効果ガスの増加に伴う気候変動を予測する一方、太陽光・風力・水力による発電量を予測して再生可能エネルギーの拡大に生かす(図4)。
2020年までに10分単位の日照・風況を予測できるようにするほか、地球規模の気候変動を50年先まで長期に予測できる技術を開発することなどが目標になっている。地球環境情報プラットフォームの構築は文部科学省と環境省が中心になって推進していく。
政府は超スマート社会を「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」に次ぐ第5の波に位置づけて、実現するための取り組み全体を「Society5.0」と呼んでいる。ドイツを中心に全世界に広がり始めたIoTによる生産技術革新の取り組み「Industry4.0」を意識したものだ。キャッチフレーズにこだわり過ぎた印象は否めないが、科学技術の力で社会変革を推進する意気込みは十分に感じられる。
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