2016年は鳥取県の「水素元年」に、人口最少の県が水素社会を目指す意義:自然エネルギー(2/2 ページ)
再生可能エネルギーの導入を推進している鳥取県は、2016年を同県の「水素元年」と位置付け、水素の導入に向けた取り組みを本格化する。その第一歩として鳥取ガス、ホンダ、積水ハウスと共同で、再生可能エネルギーで製造した水素を燃料電池車や住宅で利用する実証拠点を整備する。
水素プロジェクトは4大都市圏に集中
ここ数年間で、日本全国のさまざまな地域で水素の利活用に向けたプロジェクトが立ち上がっている。実施している地域を見てみると、関東、中部、関西、北九州を中心とした4大都市圏に集中する傾向にある。
これは水素やFCVの普及に欠かせない水素ステーションの普及ロードマップが、4大都市圏を中心に整備する方針となっている影響もあるだろう。現時点ではFCVの普及台数が少ないため、水素ステーションの採算性も課題だ。まずは人口が密集しており、さらに副生水素も利用しやすい大規模な工業地帯がある大都市圏を中心にプロジェクトが進むのは自然な流れといえる。図3に示す水素供給・利用技術組合(HySUT)が公表している全国の商用水素ステーションの整備計画を見ると、その様子がよく分かる(図3)。
図3に示した通り、現時点で鳥取県に水素ステーションは整備されていない。隣接する県を見ても山口県南部に1基のみだ。しかし今回のプロジェクトで利用するホンダのSHSは太陽光で発電した電力で、水を電気分解して水素を作れるため、水素を運搬してくる必要もない。設置に必要な敷地面積も4畳半程度で済み、水素ステーションの課題である設置コストも抑えられる。今回のプロジェクトに最適な水素ステーションといえるだろう。なお、ホンダが日本海側の地域にSHSを設置するのは今回が初の事例となる(図4)。
鳥取県の水素エネルギー推進プロジェクトはまだ第一歩を踏み出した段階だが、4大都市圏に属さない県や地域でも再生可能エネルギーを組み合わせて水素エネルギーの導入を図れるというモデルケースになれば、その意義は大きい。さらに寒冷な気候帯に属する地域で、こうした水素の製造から利用までの一貫したシステムを構築できるかという点でもチャレンジになる(図5)。
鳥取県では今後、環境省が実施する平成28年(2016年)度のモデル事業に今回発表した実証プロジェクトが採択されることを目指す。同時に2030年に向けた水素の導入ロードマップの策定も進めていく。鳥取県によれば現時点で、2030年までに県内におけるFCVの普及台数を4400台、商用水素ステーションを10基整備するという目標案を検討しているという。
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