電力自由化のカギを握る卸売市場、ポイントは「既存電力会社の取引量」:電力供給サービス(3/3 ページ)
電力小売全面自由化においてカギを握ると見られているのが、発電事業者と小売事業者が電力の売買を行える「日本卸電力取引所(JEPX)」である。同取引所が「新電力EXPO 2016」に出展し、あらためて健全な電力市場構築に向けたアピールを行った。
健全な電力市場育成のポイントは“98.5%”の動向
電力小売全面自由化への動きが本格化する中、2015年度も順調に取引量拡大が進んでおり、2016年1月28日段階で約124億kWhとほぼ前年度に並ぶ取引量となっている。これらの取引量拡大などが進む一方で、JPEX 企画業務部長の國松亮一氏は懸念を示す。
「電力小売り自由化の追い風などもあり取引量は順調な拡大が進むと見られるが、市場の健全は発展を考えた場合、既存電力会社にどれだけ卸売市場を使って取引をしてもらえるかということが重要なポイントとなる」(國松氏)
JEPXを通した取引量の拡大が進んでいるとはいえ、日本の電力需要に占める取引比率は2014年度で約1.5%程度で、影響力は非常に小さいといえる。そのため、残り98.5%の大半を占める既存の電力会社がどれだけ、JEPXに電力を卸し、調達するか、ということが今後の電力卸売市場の動向を決めるといえる。
電力システム改革により、既存電力会社は、発電、送配電、小売の3つの部門に分かれ、それぞれで個別の部門として取引を行う仕組みになっている。しかし、個別の企業に分かれたとはいえ「直接調達」ができ、個々の部門が企業の論理で考えた場合「グループ企業から安く調達する」ということは起こり得ることである。石油やガスなど他のエネルギー関連企業などが自社の発電による安価な電力調達を武器にし、競合関係が生まれた場合、電力調達を武器にできなければ、電力会社の小売部門が不利になる可能性も生まれるからだ。國松氏は「JEPXとしては、健全な市場環境を醸成できるようにアピールを続けていくしかないと考えている」と話している。
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