動き始めたEMS、課題は“補助金頼み”からの脱却:エネルギー管理(3/3 ページ)
社会課題としての電力消費の削減が大きな注目を集める中、導入が徐々に広がり始めているのがEMS(エネルギーマネジメントシステム)である。省エネ・新エネに関する展示会「ENEX2016」内において、関東経済産業局およびESCO推進協議会が展示会内展示会として開催した「省エネルギ―フェア2016」の様子を紹介する。
ICT制御による省エネを訴えたNTTファシリティーズ
NTTファシリティーズは、空調・照明・水道のそれぞれにおいて、省エネを実現するソリューションを用意。空調で約30%、照明で約70%、水道で約50%の電力や水の使用量を抑制できた実績を示し、省エネ提案をアピールした。
同社の空調向け省エネシステムとしては、中央熱源空調省エネシステム「SmartStream」を提案した。「SmartStream」は最先端ICTと空調制御を組み合わせた中央制御型の空調制御システムで、室温、湿度、給・排気など、空調に関わる全ての機器を統合し、自律制御することで、最小限のエネルギーにより、快適な室内環境を維持できる点などが特徴だ(関連記事)(図4)。
また照明向けの省エネシステムとしては、無線個別調光照明制御システム「FIT LC」をアピール。FIT LC」は、調光機能付き照明器具をスマートフォンやタブレット端末で一灯ごとに無線で制御することが可能なシステムである。PWM(Pulse Width Modulation)制御対応調光機能付きであれば、あらゆる照明器具メーカーの製品で利用可能だとしている(関連記事)。
空調メーカーとしての省エネ提案を進めるトレイン・ジャパン
ビルや工場の空調設備を展開するトレイン・ジャパンは、空調設備を軸としたエネルギーマネジメントシステムを展開。省エネ診断や設備工事など総合的な省エネソリューションなどを展開する一方、空調システムを軸とした遠隔監視、温度や空気の環境を最適に制御する「温度環境のサービス展開」などにも取り組む(図5)。
トレイン・ジャパン エネルギーコントロール事業本部マネージャーの石澤寿信氏は「基本的には既存の空調設備の顧客を中心に提案を広げている状況だ。当社の空調設備は大型のものが多いので省エネソリューションの効果も発揮しやすい。利点を明確にし、導入を拡大していきたい」と述べている。
日立製作所は「EMilia」を紹介
日立製作所は、エネルギーマネジメントシステムと設備管理システムを統合した統合エネルギー・設備マネジメントサービス「EMilia」を紹介。同サービスはオフィスや工場、店舗、病院、データセンターなどさまざまなシーンにおいて、業種や規模を問わず、省エネや設備管理などが行えるクラウド型のシステムだ。データを外に出したくないという場合などに応じて、ローカルサーバ型やハイブリッドクラウド型など多様なシステム構築ができることが利点だという(図6)。
日立製作所 インフラシステム社 産業ソリューション事業部 産業ユーティリティソリューション本部 プラットフォーム統括部 技師の中村健二氏は「現状ではEMSなどは『見える化』までは進んでも『制御』はこれからというところだと見ている。クラウド型で機能拡張なども容易にできるので、その強みを生かしてそれぞれの業界に最適な制御などを実現し、普及を広げていきたい」と述べている。
差別化のポイントをどこに置くか
EMSの普及は、補助金の後押しもあり、徐々に広がりを見せている。ただ今後を見据えれば補助金による普及促進は徐々に低減することが予想されており、その中で補助金がなくてもどのようにメリットを提供できるかということが重要になってきている。現状では、回収サイクルの短期化などは進んでいるが、EMSそのものにそれほど機能的な差がなく差別化が難しいような状況がある。今後は、より業界や業種、環境などに合わせたソリューションにより差別化につながる機能なども必要になると見られている。
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