電力会社10社で1兆円超の利益を上げるも、売上高は前年比4.7%減少:電力供給サービス(2/2 ページ)
2015年度の第3四半期(4〜12月)の決算がまとまり、電力会社10社の合計で営業利益は1兆円を大きく上回った。原油やLNGの輸入価格が前年の半値に下がったことが最大の要因だ。ただし売上高は10社を合わせて4.7%も減少した。減収率が最も大きかったのは東京電力の8.8%である。
関西電力の値上げ効果は950億円
10社の中で増益額が最大の2470億円に達した関西電力の状況もさほど変わらない。関西電力は6月に実施した電気料金の値上げで950億円の収入を増やした(図5)。ところが販売電力量が4.4%も減少した影響で860億円の収入が減ってしまった。その差額はわずかに90億円である。全体では燃料費調整額の減少によって前年比で1110億円の収入減になった。
一方で燃料費と燃料費調整額の差益は1472億円にのぼり、増益額の約6割を占めた。加えて販売電力量の減少で他社からの購入電力料が617億円も少なくて済んだ。関西電力は原子力による高浜発電所の3号機を1月29日に再稼働して、2月中に営業運転へ移行する予定だ。再稼働の効果で経費は大幅に減る見通しだが、販売電力量の減少に歯止めがかからなければ収支の改善は小幅にとどまる。
関西電力よりも早く8月から10月にかけて川内原子力発電所の1・2号機を再稼働させた九州電力では、第3四半期の決算から経費の削減効果が表れた。燃料費の総額は前年と比べて2330億円も減って、増益額を大きく上回っている(図6)。燃料費の削減額のうち、化石燃料の輸入価格による減少分が1439億円で、原子力に移行したことによる減少分が430億円ある。
九州電力が4〜12月の9カ月間に自社発電と他社受電で調達した電力量を見ると、火力は前年と比べて2割近く減っている(図7)。その代わりに原子力が増えたほか、他社から受電した再生可能エネルギーの電力量も大幅に伸びた。
特に太陽光による電力量は9カ月間で47億kWh(キロワット時)にのぼり、発受電電力量の7.5%を占めるまでに拡大した(図8)。このほかに風力・水力・地熱・バイオマスなどを加えると18.6%になり、前年から4.2ポイントも上昇している。同じペースで太陽光が増えると、2016年度には再生可能エネルギーの比率が20%を超える。2030年の国全体の目標値(22〜24%)に早くも近づく。
再生可能エネルギーの増加に伴って利用者が負担する賦課金は増えていくものの、今後は小売全面自由化の効果で電気料金が下がることは確実だ。合わせて燃料費調整額が下がれば、賦課金の増加分を吸収して料金水準は低下していく。電力会社は販売収入の減少と燃料費の減少を続けながら、微妙なバランスで利益を上げる道を模索することになる。
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