電力会社の燃料費が下がり、電気料金の単価は1年で2.9円も安く:電力供給サービス(2/2 ページ)
電気料金に上乗せする「燃料費調整単価」が1年前と比べて全国平均で3円弱も下がっている。原油とLNGの輸入価格が急速に下がったためで、2009年のリーマンショック時に並ぶ低い水準まで戻った。中でもLNG火力の比率が高い東京電力では、家庭向けの燃料費調整単価が5円弱も安くなった。
燃料費の減少傾向は今後も続く
全世界の化石燃料の需給状況を考えると、今後も輸入価格の下落傾向は続く可能性が大きい。東日本大震災後に原子力発電所が運転を停止したことによる問題点のうち、電力の供給不安と電気料金の高騰については解決したと言ってよい。残る問題は火力発電に伴うCO2(二酸化炭素)の排出と電力会社の収益である。
1月末に各社が発表した2015年度第3四半期(4〜12月)の決算では、全社が利益を上げて合計で1兆2000億円を超えた(図3)。このペースで回復すると、2015年度の通期の利益はリーマンショック前のピーク時を上回る勢いだ。ただし2016年度以降も業績回復が続くかは疑わしい。
というのも、電力会社が2015年度に上げる利益の大半は燃料費に伴う差益によって生まれているからだ。毎月の電気料金に上乗せする燃料費調整単価は3〜5カ月前の燃料の輸入価格をもとに決めることになっている(図4)。このため輸入価格が低下する局面では、電力会社の経費に反映する燃料調達価格と電気料金で徴収する燃料費調整額のあいだに平均4カ月の期ずれが生じる。
中部電力を例にとると、2015年度の第3四半期で合計1550億円の差益が生まれた。これは同期間の営業利益2379億円の65%を占めている。他の電力会社も同様の状況で、燃料費調整額の期ずれ分がなければ利益水準は大幅に低下する。
化石燃料の輸入価格は今後も下がり続ける可能性が大きいとはいえ、2015年ほど急速に下落する状況は考えにくい。電力会社が電気料金に反映するまでの期ずれで稼げる差益も小幅にとどまる。化石燃料の輸入価格の低下は利用者には長く恩恵をもたらすが、電力会社にとっては一時的な効果に過ぎない。収益構造の転換を図らなければ、厳しい経営状況は今後も続いていく。その解決策は原子力の再稼働しか残っていないのだろうか。
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