太陽光発電に初めて環境影響評価を適用、長野県で89MWメガソーラー計画:自然エネルギー(2/2 ページ)
長野県は環境影響評価の条例を改正して、広い土地に建設する太陽光発電所を対象に加えた。最初の事例になったのは諏訪市の高原で計画中のメガソーラーである。188万平方メートルの用地に31万枚の太陽光パネルを設置する一方、森林や湿原を残して自然環境を保全する対策を盛り込んだ。
環境影響評価は16項目に及ぶ
諏訪四賀ソーラー事業では第1段階の方法書の公告・閲覧が1月20日に始まった。1カ月間の縦覧を通じて住民と市町村の意見を集めたうえで、知事が事業者あてに意見書を出す手続きになっている。同様の手続きを繰り返しながら、環境影響評価の調査・予測方法や保全対策などに修正を加えていく。手続きが完了するのは2年後の2017年度末になる見通しで、その後に設計・建設工事に入る(図4)。
環境影響評価の対象には16項目が含まれている。国の環境影響評価の対象にもなる風力・水力・地熱・火力の実施項目とほとんど変わらない。太陽光発電では問題が発生しにくい悪臭や地盤沈下を除き、大気や騒音・振動、水質・土壌、動植物や景観に対する影響を調査して必要な保全対策を評価書に盛り込んでいく(図5)。
特に自然環境を保全する対策として用地の4割以上を森林や湿原のまま残すほか、発電設備の周囲に緑地や調整池を整備する(図6)。調整池は周辺地域の洪水対策の役割も果たす。用地の造成にあたって伐採した樹木は木質チップに加工して再利用する方針だ。
太陽光発電は燃料や発電機を使う必要がないことから、再生可能エネルギーの中でも環境負荷が最も低い電力源と考えられている。国が太陽光発電を環境影響評価の対象に加えていない理由だ。ただし大規模なメガソーラーになると広大な土地を必要とするため、森林破壊や景観悪化などの問題点が指摘され始めた。
長野県のほかにも太陽光発電に対して環境影響評価を義務づける自治体が増えている。事業者にとってはコストと開発期間の両面で負担が大きくなるが、再生可能エネルギーを拡大して地域社会に貢献するためには必要なプロセスである。
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