既存水力発電所の維持流量を生かして小水力発電所を追加、木曽川水系飛騨川で:自然エネルギー
中部電力と同グループで電気設備・電力関連工事などを行うシーテックはこのほど中部電力の東上田ダム(岐阜県下呂市)の設備を利用した水力発電事業に関する基本協定を締結した。
シーテックは東上田ダム左岸に河川環境を維持するための放流水を有効利用した維持流量発電所である「さこれ水力発電所」を建設する(図1)。
同発電所は、東上田ダムの左岸にある既設取水口から維持流量分を取水し、新設する水圧管路で下流側に導水(サイホン式)して、立抗内の水車・発電機で発電する。発電後の流水は現状と同様にダム直下に放流する。発電出力は370kW(キロワット)、想定年間発電量は約266万kWh(キロワット時、一般家庭約740世帯分の年間使用電力量に相当)。2017年7月に着工する予定で、2018年7月の運転開始を目指す。発電した電気は中部電力が買い取る計画。なおCO2削減量は約1320トン程度とする(図2)。
さこれ水力発電所を開発・運営するにあたり中部電力の設備を利用することから、グループ会社のシーテックが設備の所有管理区分や発電に関する管理や運用の基本方針などを定めている。
シーテックが水力発電所を開発するのは現在建設中の秋神水力発電所(岐阜県高山市、2016年4月運転開始予定、出力290kW)に次いで2カ所目。また、中部電力の維持流量発電所としては東河内(静岡市葵区、170kW)、新串原(岐阜県恵那市、230kW)、阿多岐(同郡上市、190kW)、丹生川(同高山市、2016年6月運転開始予定、350kW)、新奥泉(静岡市葵区、2017年度運転開始予定、290kW)がある。
中部電力では水力発電所は再生可能エネルギーの中でも安定した発電電力量を期待できることから、グループを上げて一般水力や維持流量発電の継続的な開発を推進する方針だ。
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