東電包囲網を築く東京ガス、37社と新たに提携しガス連合を形成:電力供給サービス
東京ガスは、低圧電力の販売に関して、新たに都市ガス供給先のガス事業者10社、LPガス販売事業者27社と業務提携し、電力販売体制を強化する。
東京ガスは2016年4月の電力小売全面自由化に向け、早期から電力市場に打って出る姿勢を鮮明に示していた。2015年12月には他社に先駆けて料金プランを発表(関連記事)。また、後出しで発表した競合他社の料金プランに対抗するため、2016年2月には早くも値下げ料金を発表するなど、積極的な動きを示している。
今回東京ガスが提携を発表したのは、都市ガス事業者10社とLGガス販売事業者27社である(図1)(図2)。これらの需要家件数の合計は49万5000件になるという。
東京ガスでは既に中堅都市ガス事業者である昭島ガス、太田都市ガス、坂戸ガス、東部ガス、武州ガスの5社との提携を発表(関連記事)している。これらの合計需要家件数は36万4000件であり、今回の新たな提携での需要家数を合わせると、85万9000件となる。これらの需要家数に対し、東京ガスは電力とのセット提案を行える体制を確保した。
ただ、東京ガスが電力販売を伸ばすことを考えると、提携先はまだまだ増やさなければならないといえそうだ。
電力に対しガスのカバーエリアが小さい東京ガス
東京ガスの電力販売で強みとなるのは、電気とガスのセット販売であるが、一方で東京電力と比べた場合、カバーエリアと最終顧客世帯数で大きな開きがあることが弱点となる。
例えば、東京電力の契約口数は2014年度末で約2923万口であるが東京ガスは2014年度末の都市ガスの顧客件数(見込み)は約1094万件(ガスメーター取り付け件数)である。またエリアについても東京電力が、栃木県、群馬県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、静岡県の富士川以東の全域であるのに対し、東京ガスの都市ガス提供エリアは、東京、神奈川の約半分と、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬の主要都市周辺に限られている(図3)。
ただ、東京ガスは、電力販売については東京電力のサービスエリア全域で行うため、強みとなる「ガスと電力とのセット販売」を行うためには、自社のサービスエリア以外のガス会社との提携は不可欠である。既にガス以外では、インターネットプロバイダー7社などとの提携なども発表しているが、最大の強みを強化する意味でも、ガス事業者との提携強化をさらに加速させていくことが予想される。
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