固定価格買取制度の改正案が決まる、2017年度から価格決定方式を変更:自然エネルギー(3/3 ページ)
政府は2月9日に「再エネ特措法」の改正案を閣議決定した。固定価格買取制度を規定した法律を改正して、2017年度から新しい運用方法へ移行する。最大の改正点は買取価格の決定方式を変更することだ。太陽光発電に入札方式を導入する一方、風力発電などは数年先の買取価格を事前に提示する。
電力の買取義務は送配電事業者に変更
買取価格を数年先まで決定するのと合わせて、買取価格が確定する認定の時期は従来よりも遅くする。現行の固定価格買取制度では、発電設備の要件が決まれば認定を取得することができる。その後に電力会社に接続を申し込み、接続契約を締結してから工事に入る流れだ(図6)。
その結果、認定を取得したまま工事を開始しない未稼働案件が太陽光発電で増大してしまった。高い買取価格で認定を受けて、発電設備のコストが安くなってから工事を開始するケースも目立つようになった。事業者が過剰に利益を出せるだけではなく、電力会社が将来の接続状況を見通しにくくなる。九州電力などが2014年度の後半に事業者からの接続申込の受付を保留したことで問題が顕在化した。
制度を改正する2017年度から、発電事業者は電力会社と接続契約を締結した後でなければ認定を取得することができない。接続契約を締結すると、契約で設定した運転開始予定日までに電力を供給できない場合には、電力会社が契約を解除することが可能だ。発電事業者は認定取得後に速やかに工事を開始して、予定の期日までに運転を開始しなくてはならない。
2016年4月に実施する電力の小売全面自由化に合わせて、電気事業者は発電・送配電・小売の3区分に再編する。これに伴って固定価格買取制度による電力の買取義務は小売電気事業者が負うことになっている。しかし太陽光をはじめ再生可能エネルギーの電力は供給量が変動するため、送配電事業者(電力会社の送配電部門)が需給バランスを調整する必要がある。
今後さらに再生可能エネルギーの導入量を拡大するためには、送配電事業者が買取義務を負って、供給量を予測しながら需給バランスを安定させることが望ましい。2016年度には小売電気事業者が買取義務者になるが、2017年度からは送配電事業者に変更する(図7)。
送配電事業者が買取義務者になると、買い取った電力を供給する方法も変わる。将来の需給状況を予測しながら、卸電力取引所(市場)を通じて小売電気事業者に供給する方法を優先させる(図8)。市場価格で電力を供給できるため、再生可能エネルギーで作った電力にも経済合理性が働くようになる。
ただし発電事業者と小売電気事業者のあいだで契約を締結した場合には、送配電事業者は指定の小売電気事業者に電力を供給しなくてはならない。小売電気事業者は契約期間を通じて再生可能エネルギーの電力を確保しやすくなる。このほかに沖縄や離島など卸電力取引所を利用できない地域では、送配電事業者が複数の小売電気事業者に電力を割り付けて配分する。
2017年度から固定価格買取制度が変わると、小売全面自由化で動き出す電力システムの改革がいっそう進む見通しだ。当面の課題は新しい価格決定方式を的確に運用できるかどうかである。先行するヨーロッパの適用例をもとに、日本の電力事情に見合った運用が求められる。主管する経済産業省の手腕が問われる。
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