輸送船に900枚の薄膜太陽電池、世界最高水準の環境性能で日本と海外を結ぶ:自然エネルギー(2/2 ページ)
世界最高水準の省エネ・環境保全性能を実現する川崎汽船の大型運輸船「DRIVE GREEN HIGHWAY」が完成した。7500台の車を積める自動車搬船で、CO2や窒素酸化物の排出量を大幅に削減する最先端の船舶技術を集約した。甲板には約900枚のCIS薄膜太陽電池を設置し、一部の電力を再生可能エネルギーで賄う。
低NOx・SOx技術を搭載
DRIVE GREEN HIGHWAYの高い環境性能に貢献している主要技術は以下の通り。主機関には川崎重工業製のエンジンを採用している。燃料に水を添加してシリンダー内の燃焼温度を下げる「水エマルジョン燃料油装置」と「排気再循環システム」、過給機の運転を最適に制御する「過給機カットシステム」を組み合わせ最適化することでNOx排出量を低減している。船舶からのNOx排出量に関する規制は今後強まる見通しで、こうした将来の規制強化にも対応していく狙いだ。
さらにSOx(硫黄酸化物)スクラバーも導入し、大気汚染の原因でありNOXと同じく排出量の段階的な規制が進んでいるSOxの排出も抑制している。これはエンジンや発電機関からの排ガスを、装置内で散布する海水または清水で洗浄してSOxを分離・吸収し、大気へのSOx排出を抑制するシステムだ。三菱重工業と三菱化工機が共同開発したものを採用している。
薄膜太陽電池を912枚、船内での水耕栽培も可能に
DRIVE GREEN HIGHWAYはこの他にも、船首部の形状最適化による空気抵抗の低減、高効率プロペラ、発電機の排ガス回収装置、LED照明、遮熱塗料、最適運航支援システムなどのさまざまな省エネルギーおよびCO2排出量の低減に貢献する技術を採用している。なお新開発の船舶用水耕栽培装置も搭載しており、航海中の乗組員に新鮮な野菜を提供することも可能だという。
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