電力会社10社が契約変更のシステム、予定どおり3月までに稼働:動き出す電力システム改革(55)(2/2 ページ)
従来の電力会社から別の事業者へ契約を変更する手続きはITを活用したシステムで処理する。国の広域機関が運用する「スイッチング支援システム」が3月1日に稼働するのと合わせて、電力会社10社でも対応するシステムの開発が進んでいる。すでにテストの大半を終えて3月末までに準備を完了する。
東京電力も「開発工程に大きな遅延はない」
実は一部のメディアが東京電力のシステム開発が間に合わないことを理由に、4月1日に小売全面自由化を実施できないと報じていた。これに対して東京電力は2月9日の政府の委員会でシステムの機能別に進捗を説明したうえで、「開発工程に大きな遅延はない」と報告している(図4)。
ただしシステムの稼働時期が3月後半になってしまうと、膨大な数の契約変更を4月1日に間に合わせて処理できない可能性も残る。広域機関の発表では、東京電力管内の契約変更の申込件数は2月5日の時点で7万4100件にのぼっている。おそらく2月中には10万件を軽く超えるだろう。
すべての契約に対して変更作業を必ず3月末までに完了できるように、東京電力は広域機関と小売電気事業者に協力を仰いで対策を準備中だ。さらに稼働後のシステムにトラブルが発生した場合に備えて、暫定的な対応策についても検討を進めている。既存のシステムや簡易的なツールを使って対応する方法のほか、人手による計算処理を併用することも想定する(図5)。
実際に広域機関のスイッチング支援システムが稼働すると、利用者の設備情報や電力使用量がほぼリアルタイムに取得できるようになる。電力使用量に関しては利用者本人の同意を確認する必要があるため、原則として翌営業日までにスイッチング支援システムから回答する流れだ(図6)。
小売電気事業者がスイッチング支援システムから情報を取得する方法は2通りある。インターネットのWebブラウザを使って情報を入力・表示する方法のほかに、小売電気事業者のシステムにAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を組み込んで自動的に情報を取得する方法がある(図7)。
利用者数が多い小売電気事業者ではAPIを利用する方法が一般的になる見込みだ。契約変更後の料金計算や需要予測を含めて、小売電気事業者にもシステムの開発・整備に迅速に対応する力が求められる。電力会社の小売部門と料金面だけではなくてITシステムの競争も始まる。
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