地熱温水でピーマンが育つ、豪雪地帯でも周年農業を実現:自然エネルギー
コンビニエンスストアのローソンと岩手県八幡平市は、地熱温水による暖房を活用して栽培した「八幡平ピーマン」を、2016年3月1日から、岩手県内の約80店舗のローソンおよび一部のローソンストア100の店舗で発売する。
今回利用する地熱温水利用ビニールハウス(60坪×3棟)は、30年以上前に建設されて以降、生産者不足や物流コスト高、販路先の確保が困難であることにより利用されていなかった設備を改修したもの(図1)。八幡平市とローソンは、企業組合八幡平地熱活用プロジェクトの船橋慶延氏の協力のもと、ピーマンを栽培する実証実験を行ってきた。
2016年で稼働50周年を迎える松川地熱発電所から暖房用の熱水供給を受けることで、冬季にクリーンエネルギーを使用してピーマンを生産することができ、豪雪地帯での周年農業が可能になる。今回の実験栽培は栽植数が約700株で、収穫期間は3月から6月。収穫量は期間中の日射量により変化するが約5〜7トンを見込む。
収穫されたピーマンは「八幡平ピーマン」の商品名で、ローソンの店舗で販売する(図2)。また、今後生産・流通・販売を通じたビジネスモデルを構築して行く計画だ。さらにローソンでは実証実験の結果を踏まえ、2016年末に向けてローソンファームの設立を検討する。
地熱発電は自然エネルギーであり、比較的安定した供給が可能なことから近年注目されている。また、発電に必要な地熱温水を再利用する地熱温水利用農業も、冬季に低コストで営農が可能になるため、今後の新たな農業の形として期待されている。
ローソンは「安心・安全」な野菜などの安定供給を目指し、現在、全国23地区で地元生産者と一緒に農業生産法人ローソンファームを展開中だ。2015年6月にはローソンファームで生産された野菜の加工を行う「香取プロセスセンター」を設立し、ローソンファームを主体とした6次産業化を推進。次世代の若手営農者の育成と農業を通じた地方創生に貢献していく方針だ。
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