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臨海工業地帯を再生可能エネルギー地帯へ、バイオマス発電で9万世帯分の電力:自然エネルギー(2/2 ページ)
鹿児島湾に面した臨海工業地帯で大規模なバイオマス発電プロジェクトが始まった。以前は造船所の用地だった場所に、国内最大級の49MWの木質バイオマス発電設備を建設する。隣接地には70MWの太陽光発電所が運転中のほか、バイオ燃料の原料になる微細藻類の屋外培養池もある。
CO2を吸収するエネルギー供給基地
これまで日本の経済を支えてきた臨海工業地帯が再生可能エネルギーの供給基地へ急速に変貌を遂げつつある。七ツ島では日本最大の微細藻類の屋外培養池が2015年5月から試験運転を続けている(図3)。IHIがNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から委託を受けて、神戸大学、ちとせ研究所と三者共同で取り組んでいるプロジェクトだ。
面積が1500平方メートルある培養池に高速増殖型の微細藻類を大量に投入して、太陽光とCO2(二酸化炭素)による人工光合成で増殖させる。この微細藻類は油脂を多く含むため、油脂を分離・改質すると炭化水素油を生産することができる。従来の軽油に代わるバイオ燃料として、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでジェット機の燃料に利用する計画もある。
かつては化石燃料を使って大量のCO2を排出していた臨海工業地帯が、今後はCO2を吸収しながらエネルギーを生産する拠点に変わっていく。鹿児島湾に突き出た七ツ島が最先端のモデルになる(図4)。
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