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洋上風力発電は鋼のスカートで海底に固定、風や波に3倍以上の抵抗力自然エネルギー(2/2 ページ)

陸上よりも強い風が吹く洋上では発電量が増える半面、発電設備の安全性とコストが大きな課題だ。大林組は「スカートサクション」と呼ぶ円筒形の構造物を開発して、風や波に対する抵抗力を3倍以上に高めた。着床式と浮体式の両方に適用可能で、従来の方法と比べてコストと工期も削減できる。

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着床式の工事費を20%、浮体式は30%削減

 着床式の場合には、発電設備を海底に固定する基礎構造にスカートサクションを適用することができる(図3)。代表的な建設方法のうち、海底に杭を打設する「モノパイル」や「ジャケット」と呼ぶ構造に応用すると、従来のように大型の機械を使って海底面に杭を打ち込む必要がなくなる。これにより基礎工事のコストを約20%、工期を約40%削減できる見込みだ。


図3 洋上風力発電設備の代表的な構造。着床式(左)、浮体式(右)。出典:大林組

 対する浮体式の場合には、発電設備から海底まで複数本のチェーンを垂らしてアンカーで固定する必要がある。このアンカーにスカートサクションを応用することができる。特に有効なのは「TLP型」(緊張係留型、Tension Leg Platform)と呼ぶ構造に適用するケースだ。

 TLP型は浮体式の構造物から海底のアンカーまで垂直にチェーンを張って、緊張力で洋上の発電設備を固定させる建設方法である(図4)。ほかの方式と比べて設置スペースが小さくて済むほか、発電設備の揺れが小さくなって発電効率が高くなるメリットがある。その半面、大型のアンカーを海底に設置して緊張力を高める必要があり、コストが増大してしまう。


図4 スカートサクションを適用した洋上風力発電設備の設置例。出典:大林組

 TLP型のアンカーにスカートセクションを使うと、従来のコンクリート製の大型アンカーに比べて材料が少なくて済み、そのぶんのコストが減る。大林組の試算では、TLP型の発電設備のコストで約20%、基礎工事のコストも約30%削減できる。工期は2分の1に短縮することが可能だ。

 最近は日本でも洋上風力発電の開発計画が広がってきた。大林組は秋田県の秋田港と能代港で計画中の着床式によるプロジェクトに参画するなど、洋上風力発電事業に積極的に取り組んでいる。

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