2016年度の買取価格が決まる、太陽光発電は非住宅用が24円、住宅用は31〜33円:自然エネルギー(4/4 ページ)
固定価格買取制度の2016年度の価格案が決まった。焦点の太陽光発電では非住宅用が前年度から3円安い24円に、住宅用も2円下がって31〜33円になる。非住宅用は発電システムの費用を従来よりも厳しい基準で想定した。風力発電などは買取価格を据え置くが、2017年度には価格決定方式が変わる。
メタン発酵ガスだけコストが下回る
バイオマス発電は燃料の種類によって買取価格が違う。木質、廃棄物、メタン発酵ガスそれぞれで導入事例が増えてきたため、資本費や運転維持費の実績データをもとに買取価格を検証しやすくなってきた。
木質バイオマス発電では間伐材などの未利用木材を燃料に利用する出力2000kW以上の発電設備が多い。初期の資本費は想定値と同等の水準ながら、稼働後の運転維持費は想定値を上回るケースが大半だ(図12)。
さらに木質バイオマス発電では廃棄物を利用する他の方式と比べて燃料費の割合が大きい。未利用木材が最も高価だが、現状では想定値に対して6割程度の低い水準に収まっている(図13)。ただし全国各地で木質バイオマス発電所が増えてきたことから、今後は想定値に近い水準まで上昇が見込まれる。当面は買取価格を据え置く可能性が大きい。
木質バイオマス発電の大半は民間の事業者が手がけている。対して廃棄物発電は自治体がごみ処理施設で実施するケースが多く、民間の事業者による導入事例は少ない。現状では資本費と運転維持費ともに想定値を上回っている(図14)。こうした状態が続くようであれば、2017年度以降に買取価格の引き上げも考えられる。現在の廃棄物発電の買取価格は17円で、木質バイオマス(24〜40円)のほぼ半額の水準である。
バイオマスの中ではメタン発酵ガス発電の買取価格が39円で高く設定されている。下水汚泥などの廃棄物を発酵させてガス化する設備が必要で、資本費と運転維持費ともに他のバイオマス発電と比べて1ケタ多いコストがかかるためだ。しかし現在のところ実際の資本費と運転維持費は想定値を下回っている(図15)。廃棄物発電とは逆に今後は買取価格を引き下げる可能性がある。
次の2017年度には固定価格買取制度を改定することが決まっている。買取価格の決定方式も抜本的に変わる。非住宅用の太陽光ではメガソーラーなどの大規模な発電設備を対象に入札方式を導入する一方、住宅用の太陽光や風力には価格低減方式を採用する。そのほかの中小水力・地熱・バイオマスは数年先まで買取価格を設定する方式になる。再生可能エネルギーの導入量を左右する買取価格は今後も流動的だ。
関連記事
- 固定価格買取制度の改正案が決まる、2017年度から価格決定方式を変更
政府は2月9日に「再エネ特措法」の改正案を閣議決定した。固定価格買取制度を規定した法律を改正して、2017年度から新しい運用方法へ移行する。最大の改正点は買取価格の決定方式を変更することだ。太陽光発電に入札方式を導入する一方、風力発電などは数年先の買取価格を事前に提示する。 - 地域密着型のバイオマス発電が拡大、太陽光の買取価格は下がり続ける
2016年は再生可能エネルギーの流れが大きく変わり始める。これまで急速に伸びてきた太陽光発電は買取価格の低下や出力制御の対象拡大によって開発計画が減少する見通しだ。地域の資源を活用したバイオマス発電が有利な条件をもとに拡大する一方で、風力・中小水力・地熱発電には課題が残る。 - 日本を変えるエネルギー革新戦略、政府が3月にも公表
国全体のCO2排出量の削減目標を定めた2030年に向けて、政府は「エネルギー革新戦略」を策定して実行計画を推進する。省エネ、再エネ、エネルギー供給システムの3分野をテーマに、省エネ基準の義務化や固定価格買取制度の改革、IoTを活用した遠隔制御技術の開発などを進めていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.