島のエネルギーを丸ごと管理、宮古島がEMS実証を日本で初めて事業化へ:エネルギー管理(2/2 ページ)
離島のエネルギー課題の解決に向けて積極的な実証を進めてきた沖縄県の宮古島が、新たな取り組みを開始する。これまでに行ったEMSで島内のエネルギー需給を管理する実証を、地元の民間企業と共同で“ビジネス化”する計画だ。電力需要の平準化やエネルギーコストの低減、再生エネ導入量の拡大などに取り組む方針で、需給協調型のEMS事業として確立できれば国内初の事例になるという。
需給調整機能を確立、エネルギーコスト削減と再エネ導入拡大へ
すまエコはバイオ燃料事業を手掛ける沖縄バイオディーゼル(沖縄県うるま市)を前身とする企業だ。市内における電力需給システムやEMSなどエネルギーの効率的な利活用に関する知見を持つという。これまで実施してきた全島EMS実証事業にすまエコが参画し、システムの運用や事業計画について検討・検証することで、EMS実証事業の将来的な事業化を目指していく(図3)。
事業化に向けた具体的な取り組みとしては、まず家庭や事業所などの需要家において、エネルギー効率が向上し、かつエネルギーを蓄積できる電力負荷装置(可制御負荷)を遠隔自働制御できる機能開発する。さらに電気自動車(EV)メーカーや、ヒートポンプ給湯器、IH調理器具メーカーなどと提携し、需要家への制御可能な電力負荷装置の普及促進も同時に進めていく。
電力負荷装置を遠隔から自動制御できるようになれば、宮古島全体の電力需要を平準化することが可能になる。これは沖縄電力の視点から見た場合、電力需要が島内に設置した発電設備容量より少ない時などに、すまエコ側が系統電力の負荷率を上げることで電力需要格差が縮まり、発電設備の効率的な運用が可能になるというメリットがある。結果的に単位電力量当りのエネルギーコストの低減にもつながる(図4)。
事業の収益モデルとして、需要家からEMSサービスの利用料を受け取るというだけでなく、このように沖縄電力から需給制御によるインセンティブを受け取るという形も考えられるだろう。
すまエコでは需給制御・調整システムの確立を経て、島内への再生可能エネルギー導入量の拡大も目指す方針だ。再生可能エネルギーによる発電設備は天候によって大きく出力が変化するが、こうした変動に対して需要家側の設備を遠隔制御することで対応する狙いだ。このようなシステムが確立すれば、年間を通じて再生可能エネルギーの接続可能量を増やしやすくなり、化石燃料のさらなる使用量削減も可能になってくる。
日本全国で特定の地域内におけるEMSの活用に向けた実証事業が進んでいる。しかし今回の宮古島市とすまエコのように、将来の実際的な運用を視野に入れて事業化を目指すのは珍しい事例だ。国内の他地域への展開や参考事例としても、同事業への期待は大きい。
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