水素スタンドを街に設置しやすく、トラックによる移動式にも新基準:法制度・規制(2/2 ページ)
ガソリンスタンドに代わる水素スタンドの拡大に向けて、政府は事業者が守るべき技術基準を改正した。再生可能エネルギーから水素を製造するような小規模な水素スタンドや、トラックなどを使った移動式の水素スタンドを対象に、技術基準を新設して安全性の高い設備を導入しやすくする。
残る課題は水素ガスのセルフ充填
3つ目の改正点は燃料電池車に水素を供給するディスペンサーと道路(公道)の距離に関する技術基準である。ガソリンスタンドではディスペンサーと公道の距離を4メートル以上と決めているのに対して、水素スタンドでは2倍の8メートル以上を規定している。
この条件だと水素スタンドの敷地面積をガソリンスタンドよりも大きく確保する必要があるため、土地代が高くつくうえに、場所も限られる。改正によってディスペンサーと公道の距離を短縮できる代替措置が認められる。公道から8メートル未満の範囲を障壁で遮断するなどの代替措置が可能になる。
政府は燃料電池車の普及に向けて2012年から水素スタンドの規制緩和を進めてきた。高圧の水素ガスを充填できるように技術基準を改正したほか、ガソリンスタンドや天然ガススタンドと併設することも可能にした(図4)。
水素スタンドを規制する法律には、経済産業省が所管する高圧ガス化法のほかに、総務省が所管する「消防法」と国土交通省が所管する「建築基準法」の合計3種類が関係する(図5)。2012年に消防法を改正してガソリン用のディスペンサーと併設を可能にした。建築基準法では市街地で保有できる水素の上限規制を2014年に撤廃している。
今後に残る検討課題の1つは、ガソリンと同様にドライバー自身がスタンドで水素を充填できるようにするかどうかである。セルフ充填を可能にすれば水素スタンドの運営費を削減することができる。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは水素社会を世界にアピールする狙いがある。そのためにも政府は2019年度までにセルフ充填の許容条件をまとめる方針だ。
関連記事
- 水素+再生可能エネルギーで電力と燃料を作る、CO2削減の切り札に
火力発電に伴って大量に発生するCO2の削減が世界全体で緊急課題になっている。CO2を排出しない再生可能エネルギーに加えて水素を活用する取り組みが日本の各地で始まった。下水処理で発生するバイオガスや太陽光・風力・小水力発電から水素を製造して、燃料電池で電力と熱を作り出す。 - 移動式の水素ステーションが広がる、東京に続いて愛知と福岡に
燃料電池車の普及に向けて最大の課題は水素ステーションの整備だ。設置コストの安い移動式の水素ステーションが解決策の1つとして注目を集めている。東京都内で3月に日本初の商用サービスが始まったのに続き、愛知県と福岡県でも9月から年末にかけて相次いで商用サービスを開始する。 - 水素ステーションの設置費用半減へ、NEDOが7つのプロジェクト始動
高いコストが障害となり普及が進まない水素ステーションのコスト低減に向け、NEDOでは新方式の複合圧力容器蓄圧器など、新たに7つの研究開発プロジェクトを始動する。障壁を取り去ることで水素ステーションのさらなる普及拡大を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.