日本の直流給電技術をイタリアで腕試し、洋上風力への適用に向け東芝が実証:自然エネルギー
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、イタリア経済振興省・新技術エネルギー環境局と共同で、高電圧直流送電システム向けの自励式交流・直流変換器の普及に向けた実証事業を実施すると発表した。
欧州地域では電力安定化・系統強化、さらには再生可能エネルギーの拡大に対応するために、大電流送電が可能な高電圧直流送電(HVDC)システムの普及が進んでいる。今回、NEDOはイタリア経済振興省・新技術エネルギー環境局(ENEA)と共同で、日本独自のHVDCシステム向け自励(じれい)式交流・直流変換器を設置し、同交換器の技術優位性と省エネルギー性能の検証を行う。NEDOがイタリアで実証事業を行うのはこれが初となる(図1)。
自励式交流・直流変換器は他励式よりも高速な制御が可能で、他の方式が適用困難な弱い交流系統(電圧・周波数が不安定な系統。例えば再来可能エネルギー電源が多数連系した系統)や、離島などの交流電源のない系統、多端子系統に適用される。具体的な適用例としては多端子HVDC洋上風力発電システムなどがある。
今回の事業は、2015年度から2年間、東芝を委託先として実施し、日本独自の技術によるHVDCシステム向け自励式交流・直流変換器をENEAのCasaccia研究所に設置し、同技術の優位性や省エネルギー性能の検証を行う。
実証する機器は、東芝独自の主回路構成により、変電機器設備とその付帯工事を不要とし、より少ない設置スペース・低コストでの自励式交流・直流変換器の設置を実現する。さらに、実証においては、この変換器の特徴である高電圧化に適したマルチレベル出力を実現する交流・直流変換制御機能を検証し、連続運転時の信頼性を評価する。
NEDOではこの実証で得られた成果を、自励式交流・直流変換器が得意とし、日本国内でも実証稼働が進んでいる洋上風力発電などのHVDCシステムへの普及に活用していく計画だ。
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