「尺寸」を取り入れた太陽電池、京セラが新ブランドで展開へ:スマートエネルギーWeek 2016(2/2 ページ)
京セラは、太陽光発電関連の展示会「PV EXPO 2016」に出展し、住宅用太陽電池モジュールの新ブランド「RoofleX」を初めて一般公開した。国内市場では太陽電池モジュール単体の販売は厳しいと見られているが「取り組む方向性によってはまだまだやれることがある」(京セラ ソーラーエネルギー事業本部 マーケティング事業部長 池田一郎氏)としている。
セル変換効率向上技術「ForZ」
さらに「パワフル」としているのが、新技術によるセル変換効率の向上である。RoofleXには、新開発の「ForZ(フォーズ)」技術を採用し、セル変換効率の向上を図っている。ForZとは、セル内部で失われていた一部の電荷を取り出し、効率的に電気に変換する技術である。また、モジュールの出力、変換効率の向上を図るために、太陽光の反射を抑える低反射ガラスを採用。加えて、セルとガラスの間に独自開発の特殊封止材を充填することで、従来利用できなかった短波長の光を電気に変換することを可能としている。さらに、セルとセルとの間をつなぐ電極の幅を従来より広くすることで、電気抵抗を抑え、通電時のロスを低減することに成功した。
これらを組み合わせることで、最終的にセル変換効率が従来品比1.0ポイント向上し19.8%、モジュール変換効率が1.2ポイント向上し17.8%となっているという(図4)。
「モジュール単体でも発想を変えればやれることがある」
国内の太陽電池モジュール市場は、産業用の低迷やFIT(固定価格買取制度)の買取価格低下傾向などから今後に向けては厳しさが増していくと見られている。太陽電池メーカーでは、総合エネルギーソリューションなどにシフトする動きが進んでいる。
これらの動きに対し、京セラ ソーラーエネルギー事業本部 マーケティング事業部長の池田一郎氏は「当社もソリューション事業の展開は当然用意しているが、太陽電池モジュールだけでも、発想を変えればまだまだやれることがあると考えている。今までの太陽電池モジュールは、製品に合わせるように架台や付属品の用意をしていたが、RoofleXは徹底的に日本の屋根に合わせたことが特徴だ。ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)などの動きもあり、より限られた屋根スペースで多くの電力を発電したいというニーズは増える。これらの需要を獲得していきたい」と同社の考えを述べている。
関連記事
- 水上式のメガソーラーで世界最大、ダムの水面に5万枚の太陽光パネル
千葉県にある工業用水の専用ダムで世界最大の水上式メガソーラーの建設が始まった。18万平方メートルの水面に5万1000枚の太陽光パネルを浮かべて、1年間に4500世帯分の電力を供給する。京セラグループが建設・運営して、千葉県には水面の使用料などで年間に約3000万円が入る。 - 太陽電池を作ると同時に自ら使う、年間5700MWhを節電するパネル工場
京セラは太陽電池セルを生産する「滋賀野洲工場」において、工場屋根スペースへの太陽光発電システムの設置や、製造設備の省エネ化、未利用エネルギーの活用といった省エネ活動に取り組んでいる。これにより年間5659MWhの使用電力量と約4388トンのCO2を削減しているという。 - 太陽光発電と直結できる蓄電池に注目、容量7.2kWhで300万円
住宅用の蓄電池で太陽光発電システムと直結できる新製品が相次いで登場してきた。京セラは太陽光発電の電力を変換するためのパワーコンディショナーの機能を蓄電池に内蔵させた。変換に伴う電力の損失を防ぐことで充電効率が96%まで向上する。太陽光で発電した電力を効率よく充電できる。 - 2020年に向けZEH化ロードマップ、「我慢の省エネ」から「快適な省エネ」へ
経済産業省では、エネルギー基本計画に明記されたZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の政策目標達成のために、ZEHロードマップ検討委員会を開催し、検討結果について取りまとめた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.