再生可能エネルギー60%の電力を6月から、電力会社よりも安い料金で:電気料金の新プラン検証シリーズ(26)(3/3 ページ)
北海道で5割以上の家庭が加入するコープさっぽろが注目の料金プランを発表した。固定価格買取制度で買い取った電力を含めて再生可能エネルギーの比率を60%に高めたメニューを提供する。しかも料金は北海道電力の標準メニューより安く、灯油とセットで最大3%割り引く。
再エネ20%超のメニューが全国に広がる
政府は2030年における国全体の電源構成の中で、再生可能エネルギーの比率を22〜24%に高める方針だ。2014年度の時点では水力を含めた再生可能エネルギーの比率は12.2%で、震災後の3年間に1.8ポイント上昇した(図7)。これ以上のペースで再生可能エネルギーを増やしていくためには、企業や家庭が再生可能エネルギーの電力を積極的に購入する必要がある。
コープさっぽろに続いて再生可能エネルギーを多く含む電力を販売する小売電気事業者が全国で増えていく。ただし現実には再生可能エネルギー100%の電力を販売することはむずかしい。当面はエネルギーミックスの目標値が1つの判断基準になる。最初からハードルを上げ過ぎずに、再生可能エネルギーの比率が20%を超えれば環境価値の高い電力と考えるべきだろう。
現在のところ市場に流通する電力のうち再生可能エネルギーは1割強しかないことを考えると、小売電気事業者が電源の開発・調達を積極的に進めなければ再生可能エネルギーの比率が20%を超える電力を販売し続けることはできない。
コープさっぽろは以前から再生可能エネルギーの電源開発に取り組んできた。日射量の多い帯広市の2カ所に太陽光発電所を建設して、2013年から運転を続けている。それでも2016年1月の発電量は約20万kWhで、道内の一般家庭の使用量(月間280kWh)に換算して700世帯分を超える程度だ(図8)。6月1日から「FIT電気メニュー」の供給を開始するまでに、大量の電源を確保する必要がある。
コープさっぽろが推進するもう1つの再生可能エネルギーはバイオマスである。函館市の近くでバイオガス製造プラントを運営している。家庭で大量に発生する生ごみのほか、酪農家から家畜の糞尿を収集して、メタン発酵によるバイオガスを製造する(図9)。このバイオガスを使って発電した電力を販売することも可能だ。
生協だけではなくて地方の自治体が電力の小売に乗り出す動きも活発に始まっている。再生可能エネルギーの地産地消を通じて地域の経済を活性化する狙いがある。小売全面自由化によって、地方を中心に再生可能エネルギーの電力が広がっていく。
関連記事
- 小売営業ガイドラインが固まる、セット販売の説明や電源構成の開示など
政府は電力の小売営業に関するガイドラインの素案を策定した。小売電気事業者に家庭向け標準メニューの公表を求めるほか、ガスや電話とセット販売する場合の割引・解除条件の説明も必要とする。原子力や再生可能エネルギーを含む電源構成の開示は義務化せずに、「望ましい行為」にとどめる。 - 市民電力や生協が続々と小売電気事業者に、再生可能エネルギーを家庭へ
小売電気事業者に21社の登録が新たに認められて、事業者数は合計で169社に拡大した。その中でも再生可能エネルギーによる電力の地産地消を目指す自治体や生協の参入が目立つ。自治体では鳥取市と福岡県みやま市、生協では東京都と兵庫県の事業者が家庭向けにも電力を販売する計画だ。 - 激戦区の関西電力エリアに、生協が低価格・低CO2で挑む
大阪府の南部で50万人の組合員を抱える生協が関西電力に対抗する料金プランを打ち出した。毎月の使用量が標準の300kWhの場合に4%安くなり、使用量が多いと割引率が10%以上のプランもある。大阪ガスや携帯電話会社のセット割引とも競争しながら、CO2排出量の少ない電力を販売していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.