ニュース
水素を吸収・貯蔵・放出できる合金、建物内の余剰電力を最大限に生かす:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
清水建設が「水素吸蔵合金」とエネルギー管理技術を組み合わせて、建物内の電力と熱を最適に利用できるシステムを開発する。水素貯蔵合金は1000倍以上の容量の水素ガスを吸収・貯蔵・放出できるため、次世代の蓄電池として期待がかかる。福島県に実証システムを構築して効果を検証する。
2020年のオリンピックまでに実用化
水素吸蔵合金を使うと、気体の水素を常温・常圧の状態で1000倍以上の容量まで貯蔵することができる。水素の貯蔵方法には気体のまま圧縮する方法や、マイナス250度以下の低温で液化する方法もある。圧縮すると150倍程度、液化すると800倍程度の容量まで水素を貯蔵することが可能だ。こうした方式と比べて水素吸蔵合金は貯蔵容量が大きく、常温・常圧で扱えるメリットもある。
さらに水素吸蔵合金は水素を吸収する時に熱を放出する一方、逆に水素を放出する時には熱を吸収する特性がある(図4)。この熱のエネルギーが大きいために、建物内の空調などに熱を利用することができる。放出した水素を使って燃料電池で電力と熱を供給する以外に、水素吸蔵合金の排熱と吸熱を生かしてエネルギーの利用効率を高めることが可能になる。
清水建設は独自に開発した「スマートBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)」を使って、水素貯蔵合金タンクと燃料電池を組み合わせた水素エネルギー利用システムを構築する。福島県の郡山市にある産総研の「福島再生可能エネルギー研究所」の構内に実証システムを設置する予定だ(図5)。
関連記事
- 水素+再生可能エネルギーで電力と燃料を作る、CO2削減の切り札に
火力発電に伴って大量に発生するCO2の削減が世界全体で緊急課題になっている。CO2を排出しない再生可能エネルギーに加えて水素を活用する取り組みが日本の各地で始まった。下水処理で発生するバイオガスや太陽光・風力・小水力発電から水素を製造して、燃料電池で電力と熱を作り出す。 - 再生可能エネルギーの出力変動を水素で解決、貯蔵した水素で「MIRAI」も走る
不安定な再生可能エネルギーの出力をどう制御するかは大きな課題だ。九州大学が実施している「スマート燃料電池社会実証」では、こうした課題の解決策として再生可能エネルギーを水素として貯蔵する実証実験がスタートしている。さらに貯蔵した水素を燃料電池車に供給するなど、水素社会の実現に向けた先進的な取り組みだ。 - 太陽光エネルギーを水素で貯蔵、変換効率15.3%を達成
理研は、太陽光エネルギーから水の電気分解により水素を製造し貯蔵するシステムを開発。シンプルな構造で安価なシステムを実現し、エネルギー変換効率15.3%を達成したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.