課題の水素ステーション、普及に貢献する関連技術が続々登場:スマートエネルギーWeek 2016(2/2 ページ)
「水素社会」実現に向けた取り組みが進んでいるが、その大きな課題となっているのが水素ステーションなどインフラの普及である。2016年3月2〜4日に開催された水素・燃料電池関連技術の展示会「FC EXPO 2016」では水素インフラ普及に貢献するさまざまな技術が披露された。
小型化を実現したスマート水素ステーション
計装製品製造・販売の日立オートモーティブシステムズメジャメントはFCV向け70MPa対応水素ディスペンサー「ネオライズ」を出展した。従来製品の半分の小型化を実現。また、独自のコリオリ式質量流量計や、ディスペンサー内配管補正などで、高精度で安定した計測・充填(じゅうてん)ができる。全面ガラスで表示が見やすく、人にやさしく街に溶け込みやすい曲面を用いるなどデザイン性も高めている(図3)。
神戸製鋼所は圧縮機、冷凍機、制御盤などをオールインワンでコンパクトパッケージした水素ステーションパッケージ「ハイアック・ミニ」を展示した。複数の機器をオールインワン化することで従来の別置きタイプに比べ50%の省スペース化を実現している。FCV6台/時に対応、機器構成の能力を最適化しコストダウンも達成している。パッケージ化により現地工事費および工事期間も削減できる。
ホンダは独自の高圧水電解システム「Power Creator」を採用した「スマート水素ステーション(SHS)」(モックアップモデル)をはじめとした製品・技術を出展した。パッケージ型水素製造・貯蔵装置のSHSはPower Creatorにより、コンプレッサーを使用せずに、ソーラーなどの再生可能エネルギーなどを活用した電力から、低炭素な高圧水素ガスの製造・供給を可能にする。パッケージ化によって工事出荷後の設置工事が大幅に短縮できる他、設備の設置面積を大幅に削減できる(図4)。
水素インフラの安全を守るセンサー、計測機器では、新コスモス電機が水素ステーション用ガス検知警報器NV-600HS、ガス検知部KD-12/PD-12などを紹介した。これらは水素ステーションに適した他点式ガス検知警報器とガス検知部で、低濃度から高濃度まで、設置場所、用途にあわせた検知が可能だ。KD-12は濃度表示機能付き検知部。PD-12は吸収式の濃度表示機能付きガス検知部。NV-600HSはppmからLEL(爆発下限界)まで幅広い濃度の測定が可能な指示警報部となっている。
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