HEMSと連携する電気自動車のワイヤレス充電システム、数年後に実用化へ:電気自動車
IHIは電気自動車やプラグインハイブリッド車用の非接触給電システムの実用化に向け、三井ホームと共同で実証実験を開始する。一般的なEV普通充電器の電力に相当する3.3kWのシステムを三井ホームのスマートホームで利用し、HEMSとの連携を検証する。2〜3年後の実用化を目指す方針だ。
低CO2な自動車として普及が期待される電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)。現在は車両に専用の充電器を挿し込んで充電するのが一般的だが、さらなる利便性の向上に向けて、複数の企業が非接触給電システムの開発を進めている。
IHIもその1社で、同社では2011年から磁界共鳴方式を採用した非接触給電技術の開発に着手している。今回発表した三井ホームと行う共同実証では、EVやPHV用の一般的な普通充電器の電力に相当する3.3kWで非接触給電を行う。実証場所は千葉県柏市にある三井ホームの「スマートハウスMIEDAS」だ(図1)。
既に両社は戸建住宅におけるEVの非接触給電システムの実用化に向け、2012年2月から共同実証に取り組んできた背景がある。実証の特徴となるのが非接触給電システムとスマートハウスのエネルギーを管理するHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)との連携だ。
日本国内でも家庭部門におけるエネルギー需要の削減に向け、ZEH(ゼロエネルギーハウス)普及に向けた動きが進みはじめている。ZEHの実現においてポイントとなるのが住宅内のエネルギーを最適に制御するHEMSの活用だ。IHIと三井ホームではEVはPHEVを「家庭に接続する電源の1つ」と捉え、こうしたHEMSとの連携を実現する技術開発に取り組んでいる。
しかしEVの充電には多くの電力を必要とする。EMSと接続する場合には、家庭内の他の機器の電力消費状況を考慮して充電する必要がある。今回の実証では総務省より高周波利用設備の許可を受け、IHIが開発する非接触給電システムを三井ホームMIDEASのHEMSに接続し、周囲住宅や既存機器、電源系との共存評価、HEMSとの接続評価、設置性評価などを実施する計画だ(図2)。
IHIは今回の検証結果を踏まえ、非接触給電システムを2〜3年後の実用化を目指して開発を進めていく。将来的には開発した非接触給電システムをIHIグループのインフラ製品と組みあわせて展開していく方針だ。
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