日本政府が目指す水素社会実現への道:スマートエネルギーWeek 2016(2/2 ページ)
2016年3月2日に開催された「FC EXPO 2016」の基調講演では「水素社会の幕開け」をテーマとし、経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部燃料電池推進室室長の戸邉千広氏が登壇。日本における水素社会実現に向けた取り組みを紹介した。
水素普及3つのフェーズの進行状況
現状で各段階の状況をみると、フェーズ1で取り上げられている家庭用燃料電池(FC、エネファーム)の普及については15万台を突破しており、2020年に140万台普及を目標に早期の市場自立化を進めている。価格については、現在は150万円と当初の半分の値段となった。普及拡大を進めるためにも80〜100万円程度までのコストダウンが求められている。
さらに、家庭用FCの主要メーカーが欧州などのボイラーメーカーとのアライアンスを通じて海外市場の開拓を進めており、これまでに100台程度を納入しているという。家庭用FCよりも能力の大きい業務用・産業燃料電池については、2017年に市場投入を目指して最終的な実証試験中だ。投入を予定しているのは高い発電効率が特徴のSOFC(固体酸化物形燃料電池)で、今後国内に加えて大きな市場が見込まれるグローバルマーケットでの展開も期待されている。
燃料電池車(FVC)については、普及促進のカギとなる水素供給場所(水素ステーション)の構築を進めており、現在水素ステーションは81カ所(再生可能エネルギー由来の小型ステーションを含めると86カ所)の整備が進められており、このうち47カ所がオープンしている。水素の販売価格は1000〜1100円/キログラム。戸邉氏は「さらにステーションの建設また運営コストコストダウンを推進していく」とし、さらなるステーションの整備に向けての取り組みに力を注いでいる。
フェーズ2では大規模な水素供給システムの確立(水素サプライチェーン)が大きな目標となる。褐炭など未図利用エネルギーから取り出した水素は、大幅に圧縮して有機ハイドライドまたは液化水素として(水素キヤリア)大量輸送、貯蔵し、再度取り出して活用する計画だ。それに向けては多くの技術的な課題があり、2015年度からNEDOを通じて実証事業に取り組んでいる。
その事業は「褐炭由来水素大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業」「有機ケミカルハイドライド法による未利用エネルギー由来水素サプライチェーン実証」「水素CGS活用スマートコミュニティー技術開発事業」「低炭素社会実現に向けた天然ガス・水素混焼ガスタービンの開発」の4つだ。
フェーズ3では再生可能エネルギー由来の水素活用がテーマとなる。戸邉氏は「国内で再エネの系統接続問題が顕著化する中でP2G(Power to Gas)技術を活用することで無駄なく再エネ導入量の拡大図ることを検討する。それによりCO2フリー水素チェーンの実現に向けた足掛かりとなることが可能となる」と水素活用の狙いを説明する。ドイツなどでは、余剰再エネ問題の解決策として、水電解で水素を製造・利用するP2G技術を応用する実証実験が始まっている。余剰電力を水素にして貯蔵することは大規模かつ長期間の貯蔵できるというメリットがあるようだ。
日本でもP2Gの活用としては「系統負荷の軽減(デマンドレスポンス)」「水素製造・貯蔵による自然変動電源の変動出力の吸収」「経済価値の低い不安定電力を活用した水素製造に用いる」などが例として今の段階で考えられている(図3)。
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