首都圏を攻める電力会社、地元にないシンプルなメニュー:電気料金の新プラン検証シリーズ(27)(3/3 ページ)
全国の電力会社が首都圏の家庭を対象に相次いで小売に乗り出した。東北電力が3月10日に料金プランを発表、すでに営業活動を始めた中部・北陸・中国・四国電力と合わせて5社が東京電力の管内に攻め込む。基本料金が無料、一定の使用量まで固定料金など、シンプルで割安なメニューを用意した。
大きな家庭や商店では九州電力グループが安い
各社が標準家庭でも割安になる料金プランを打ち出したのに対して、中部電力は使用量が多い家庭を対象にしたメニューで勝負する。契約電力が50A以上の家庭を対象に、基本料金と電力量料金の両方が割安になるように単価を設定した。
中部電力が首都圏で販売する「カテエネプラン」は、東京電力の「従量電灯C」を使っている大型の家庭や商店・事務所向けに提供する。毎月の基本料金は8kVA(キロボルトアンペア)までが一律の1201円だ(図9)。
1kVAは家庭内で標準の100Vの電力を使う場合に10Aに相当する。50Aの家庭では5kVAになる。「従量電灯B/C」では50A(5kVA)の基本料金は1404円で、それよりも「カテエネプラン」のほうが安い。8kVAで比べると1045円も割安になる。
電力量料金の単価は毎月の使用量に関係なく一律の27.71円である。「従量電灯B/C」の2段目(25.91円)よりは高く、3段目(29.93円)よりも低い。300kWhを超えて大量に電力を使う家庭ほど割引率が大きくなる設定だ(図10)。
同様のメニューは九州電力グループの九電みらいエナジーも首都圏で販売する。「基本プランM」と「基本プランL」の2種類あって、特に電力量料金の単価が安い。月間の使用量が300kWhまでは23.30円、300kWhを超えると26円である(図11)。中部電力の「カテエネプラン」(27.71円)と比べても割安だ。
契約電力が40A以上の家庭が対象で、月間使用量が400kWhの場合に「従量電灯B/C」と比べて607円安くなる。オール電化の家庭や商店・事務所のように契約電力も使用量も大きいケースでは、年間に4万円弱も安くなる(図12)。
同じ条件(契約電力10kVA、月間使用量1000kWh、燃料費調整単価を含む)で「カテエネプラン」の料金と比較してみると、月額で2286円も安い。九州電力に先行して首都圏に参入した九電みらいエナジーの料金プランには強い意気込みが感じられる。
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