プレスで作る「全固体電池」、電気自動車に向く:スマートエネルギーWeek 2016(3/3 ページ)
開発中の全固体リチウムイオン蓄電池セルを日立造船が公開した。第7回 国際二次電池展(バッテリージャパン 2016、東京ビッグサイト)では4種類の電池セルを見せた。製造時に液系プロセスを用いず、プレス加工によって電池セルを作り上げたことが特徴。使用時の加圧が不要で、エネルギー密度も確保した。
自動車用のプレス技術を応用
日立造船は自動車ボディ用のプレス機械を製造しているため、プレス技術に強みがある。プレスによって粉体を押し固め、蓄電池セルを製造することを考えた。「粉末を均一にペースト化するためにバインダーや界面活性物質など『余計な』物質を混ぜ、これを集電板に塗り、余計な物質を取り除くために焼成過程を設けるというのが、一般的な製造手法だ。この手法だと材料を均一にできるものの、焼成時に副成物が生じ、電池の性能に影響を与える」(同氏)。
これを避けるために液系プロセスや焼成過程を使わない手法を開発した。図5に示したように集電板の上に3種類の粉体を「積もらせる」。正極活物質と固体電解質の混合物、固体電解質、負極活物質と固体電解質の混合物だ。
その後、常圧化でプレスして粉体を結着させて固める。全体の厚みは数分の1に減るという。「プレスだけでは粉体粒子同士の接触面積が十分大きくならない。そこで固体電解質や活物質の粒径のバランスや形状を工夫した。例えば固体電解質は活物質よりも直径が小さい」(同氏)。
プレスに要する圧力は自動車用のプレスと比較すると、かなり小さく、加工時間も短いという。
圧力の優位性がもう1つある
製造プロセス以外でも「圧力」に特徴があるという。「他社の全固体リチウムイオン蓄電池では、固体電解質の空隙を減らし、高い充放電性能を得るために、充放電時にセルへ圧力を加えているものがある。当社の技術では常圧下でもイオン伝導性が保たれるため、加圧は必要ない」(同氏)。今回紹介した性能値は、全て大気圧下のものだ。
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