木質バイオマス発電の拡大が続く、1カ月で8万5000kWが稼働:自然エネルギー
固定価格買取制度の認定を受けた発電設備のうちバイオマスを燃料に利用する設備が拡大している。政府が発表した最新のデータによると2015年11月に全国6カ所で合計8万5000kWの発電設備が運転を開始した。木質バイオマスが多いが、メタン発酵によるバイオガス発電や廃棄物発電もある。
資源エネルギー庁が固定価格買取制度による再生可能エネルギーの導入・買取・認定状況の最新データを公表した。2015年11月の1カ月間で82万kW(キロワット)の発電設備が新たに運転を開始して、累計の導入量は2500万kWを超えた(図1)。
図1 固定価格買取制度による再生可能エネルギーの導入・買取・認定状況(2015年11月時点。画像をクリックすると拡大)。各欄の下段の数字は前月比。バイオマスは燃料に占めるバイオマスの比率を反映。出典:資源エネルギー庁
従来と同様に太陽光発電が多いものの、バイオマス発電の増加が目を引く。2015年11月だけで8万5000kW分の発電設備が運転を開始して、累計では風力発電を抜いて太陽光に次ぐ2番目の規模に拡大した。
稼働したバイオマス発電設備の中では、昭和シェルグループが神奈川県の川崎市に建設した「京浜バイオマス発電所」の4万9000kWが最大だ(図2)。燃料には海外から輸入する木質ペレットとパームヤシ殻の2種類を使う。年間の発電量は一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して8万3000世帯分に相当する。
このほかでは鹿児島県の薩摩川内市で運転を開始した中越パルプ工業の木質バイオマス発電設備が大きい(図3)。地域の間伐材など未利用木質を燃料に使って2万3700kWの電力を供給することができる。年間の発電量は一般家庭で4万3000世帯分に相当する規模になる。
同様に木質バイオマスを燃料に利用した発電設備は茨城県(未利用木質、5750kW)と大阪府(建築廃材、5750kW)でも運転を開始した。その一方では北海道でメタン発酵によるバイオガス発電(150kW)と廃棄物発電(672kW)が稼働している。
新たに固定価格買取制度の認定を受けた発電設備でもバイオマスが順調に伸びている。2015年11月の1カ月間に全国6カ所で合計7万8000kWの発電設備が認定を受けた。愛知県で5万kW、佐賀県で2万3000kWの大規模なバイオマス発電設備が一般木質(輸入材など)で認定を受けている。
このほかに群馬県で3334kW、山形県で1000kWの発電設備が未利用木質(間伐材など)の認定を受けた。メタン発酵バイオガスでは北海道(750kW)と静岡県(20kW)の発電設備が認定を受けている。
太陽光とバイオマスを中心に発電設備が拡大して、買取電力量も飛躍的に増えてきた(図4)。2015年11月の買取電力量は35億kWh(キロワット時)に達して、前年同月の23億kWhから1.5倍に拡大した。そのうち太陽光が25億kWhと最も多く、次いでバイオマスが5億kWh、風力が4億kWh、中小水力が1億kWhである。
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