転機を迎える太陽電池市場、ZEHとソリューション提案に活路:太陽光(4/4 ページ)
太陽電池市場が転機を迎えている。固定買取価格制度による買取価格の低廉化が進み新規受注が減少傾向にある他、好条件のメガソーラー立地は減少。太陽光パネルそのものの価格競争も激化しており、太陽電池モジュールメーカーの経営環境は厳しさを増している。こうした中でメーカー各社の戦略も多様化してきている。「PV EXPO 2016」での各社の方向性をレポートする。
パネルの展開で工夫する京セラ
総合ソリューション提案などへのシフトの動きが目立つ中で、あえて住宅用太陽電池モジュールの新製品として新ブランド「RoofleX(ルーフレックス)」を強力に打ち出したのが京セラだ。京セラは、「ジャストフィット」「フレキシビリティ」「パワフル」の3つを特徴とした新ブランド製品の投入を発表。「PV EXPO 2016」でお披露目を行った。
新ブランド製品の特徴が、住宅屋根全体での発電効率の最適化を目指した点だ。長方形タイプのモデルに尺寸法を適用し、日本の屋根にぴったり収まるようにした他、新開発の「ForZ(フォーズ)」技術を採用し、セル変換効率の向上を図った。
京セラ ソーラーエネルギー事業本部 マーケティング事業部長の池田一郎氏は「当社もソリューション事業の展開は当然用意しているが、太陽電池モジュールだけでも、発想を変えればまだまだやれることがあると考えている。今までの太陽電池モジュールは、製品に合わせるように架台や付属品の用意をしていたが、RoofleXは徹底的に日本の屋根に合わせたことが特徴だ。ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)などの動きもあり、より限られた屋根スペースで多くの電力を発電したいというニーズは増える。これらの需要を獲得していきたい」と述べている(関連記事)。
生き残りには強みを生かした戦略が必要に
「PV EXPO 2016」の出展では、多くの企業が「住宅向け」とパワコンや蓄電池などと組み合わせた「総合ソリューション化」を進めている傾向が見えた。日本市場では、住宅向けでは、「2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEH(ネットゼロエネルギーハウス)の実現を目指す」とするZEH普及への取り組みや、「2020年までに新築住宅・建造物について段階的に省エネルギー基準の適合を義務化する」とする改正省エネ基準の動きなどから、特に新築住宅におけるエネルギー効率の向上への動きが拡大。今後の安定的な成長が見込まれるため、従来のパネル単位だけでなく、屋根単位でより多くの発電を行えるようにするとした提案が進んでいる。
一方で、ソリューション提案は、パネル単体での差別化が価格以外で難しくなってきていることから、さまざまな周辺機器を組み合わせて付加価値を向上させることで、利益を確保しようという提案である。ただ、こちらも施工業者など販売・施工パートナー次第というところもあるため、どこまでパートナー関係を確保するのかという点や、どういう組み合わせを実現するのか、という点がポイントとなる。そのため、こちらも特徴を打ち出すには工夫が必要だといえる。どちらにしても、太陽電池モジュールを単純に販売するだけでは、頭打ちになるのが目に見えており、各社ともにどこで勝負をするのか、という戦略性が問われるようになっているといえる。
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