新電力のシェアが10%に近づく、家庭向けは東京ガスが10万件を突破:電力供給サービス(2/2 ページ)
2000年に始まった電力の小売自由化が16年を経過して軌道に乗ってきた。企業向けに販売する新電力のシェアが2015年度に入ってから急上昇して8%台に達した。まもなく自由化が始まる家庭向けでも新規参入組の躍進が目立つ。ただし適正な営業活動の徹底や電源構成の開示などに課題が残る。
電源構成の開示が続々と始まる
経済産業省は2016年1月に「電力の小売営業に関する指針」を改定して、問題となる行為や望ましい行為を具体的に規定した。この指針で最も重視している点は、需要家に対して適切な情報を提供することだ。小売電気事業者の情報提供に関する望ましい行為の1つに、販売する電力の電源構成を開示する問題がある。
電源構成は水力・火力・原子力・再生可能エネルギーなどの比率を示したもので、需要家が電力の特性を参考にしながら購入先を選ぶことができる(図3)。経済産業省は電力会社や小売電気事業者に電源構成の開示を義務づける方向で検討したものの、一部の事業者の反対などもあって義務化を見送った経緯がある。
それでも電源構成を開示する小売電気事業者が数多く出てくる見通しだ。すでにソフトバンクが3月14日に受付を開始した「FITでんきプラン」では電源構成を開示している(図4)。再生可能エネルギーで作った電力のうち、固定価格買取制度(FIT:Feed-In-Tariff)で買い取った電力は「FIT電気」と表記することが経済産業省の指針で決められている。
東京ガスも3月末までに電源構成を開示する予定だ。LNG(液化天然ガス)で発電した電力を100%提供することを明記する(図5)。LNGを燃料に使った火力発電は石炭火力や石油火力と比べてCO2(二酸化炭素)の排出量が少ないため、相対的に地球環境にやさしい電力であることをアピールできる。
再生可能エネルギーやLNG火力を中心に電力を販売する小売電気事業者は電源構成の開示に積極的だが、CO2排出量の多い石炭火力や石油火力、放射能汚染のリスクがある原子力を多く含む電力を販売する事業者が電源構成を開示するかどうかは注目だ。特に電力会社10社すべてが電源構成を開示すれば、需要家の判断基準の1つとして定着する可能性が大きい。
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