「電池なし」の電気自動車で有人走行、道路を電化しタイヤから送電:電気自動車
豊橋技術科学大学と大成建設は一般的なアスファルト舗装に近い構造で道路を電化し、その上をバッテリーレスの電気自動車で有人走行することに成功した。道路に埋設した電極からタイヤを通じて送電する仕組みで、バッテリーレスの電気自動車を使った有人走行の事例は世界初になるという。
電気自動車(EV)の普及課題として「1充電当たりの航続距離」と「充電時間の長さ」が指摘される。この課題を解決する技術開発に取り組んでいるのが豊橋技術科学大学と大成建設だ。両社の技術開発の大きな特徴が、バッテリーを持たないEVに対して路面から駆動用の電力を送電するという点にある。
両社はこのほど一般的なアスファルト舗装に近い構造で道路を電化し、その上をバッテリーを搭載しないEVで有人走行することに成功したと発表した(図1)。バッテリーレスEVでの有人走行の成功は世界初の事例になるという。
実証走行は総務省の高周波利用設備の認可を得て、豊橋技術科学大学の敷地内で実施した。まず約30メートルあるテストコースの道路内部に、2本のレール電極板を埋め込み「電化道路」を開発。この電化道路から発する高周波電力を、路面との接点になるEVのタイヤを通して集電する「タイヤ集電方式」でバッテリーを搭載しないEVを駆動させた(図2)。
豊橋技術科学大学と大成建設では、以前からこうした走行路の電化とバッテリーレスEVによる走行実証に取り組んでいる。2014年9月には建物内フロアを電化し、バッテリーレス電動カートの有人走行実験を実施。2015年10月には建物内のアスファルト床でEVの停車中給電に成功している。
両社では今後、今回の実証走行の成果を踏まえ、電化道路の基本性能の向上、低コスト化、安全性や標準化などの課題に取り組み、次のステップとして自動車専用道路での実証実験を目指す方針だ。実用化の具体例としては、将来は同システムを工場や物流施設などの屋内搬送システムへの応用を想定する。
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