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電気自動車の充電時間を短縮できる全固体電池、トヨタと東工大が開発:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
次世代の電気自動車に搭載する高性能のリチウムイオン電池の研究開発が活発に進んでいる。トヨタ自動車と東京工業大学の研究グループは電解液を使わない全固体電池の性能を向上させることに成功した。リチウムイオンの伝導率を従来の2倍に高めて、充電・放電時間を3分の1以下に短縮できる。
1000回の充電・放電でも安定して作動
新開発の電解質を使って全固体電池を試作して特性を検証した。高電圧タイプと大電流タイプの2種類を高温(100度)と室温(25度)の両方で作動させた結果、イオン伝導率が低くなる室温の状態でも現行のリチウムイオン電池と比べて3倍以上の速さで充電・放電できることが確認できた。電池の重量あたりの容量(比容量)が小さい場合には1分で放電を完了する(図3)。
図3 試作した全固体電池の放電特性(左、Cは1時間あたりの放電率)、大電流タイプの充放電特性(右上)と耐久性試験(右下、黒は充放電効率、青は充電容量、赤は放電容量)。単位:mAh/g(ミリアンペア時/グラム)。出典:東京工業大学
加えて現行のリチウムイオン電池では対応がむずかしい100度の高温状態でも、安定して充電と放電を繰り返すことを実証できた。1回あたり3分の高速で充電・放電を1000回繰り返しても安定した電圧を確保することが可能だ。
特に大電流タイプでは、比容量が100mAh/g(ミリアンペア時/グラム)を超えても2.5V(ボルト)の電力を安定して供給できる。これで全固体電池の電解質のレベルではエネルギー密度を250Wh/kg(ワット時/キログラム)以上に高めることが可能になった。NEDOのプロジェクトの目標である製品レベルのエネルギー密度200〜250Wh/kgの達成に近づいた。
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