東京電力のスマートメーターさらに遅れる、4月1日に間に合わないケース多発も:電力供給サービス(2/2 ページ)
小売全面自由化に水をさす事態が広がっている。契約変更に必要なスマートメーターの設置が東京電力の管内で大幅に遅れて、自由化が始まる4月1日に間に合わないケースが大量に発生する見通しだ。4月1日までに設置が必要な32万台に対して、3月21日の時点で5万台強しか設置できていない。
東京電力の新メニュー移行分が6割以上
東京電力は「4月1日までの設置が間に合わないものについては、4月中の工事完了に向け、最大限早期設置に努める」とあいまいな説明しかできていない。経済産業省はスマートメーターの設置が遅れる場合には、遅れが解消できる時期のめどを報告するように求めたが、東京電力は具体的なスケジュールを提示しなかった。
ここで問題になる点は2つある。1つはスマートメーターの設置が契約変更日に間に合わなかった場合の措置をどうするのか。もう1つは現時点で契約変更の6割以上を占めている東京電力の小売部門による新メニュー移行分の対応だ。
4月1日までにスマートメーターの設置を完了しなくてはならない38万5000件のうち、契約変更日が4月1日になっているのは1000件にも満たない。その後は週あたり約10万件のペースで契約変更日が設定されている(図4)。
東京電力が4月1日以降もスマートメーターの設置台数を増やしていけば、契約変更日に間に合うケースは少なくないはずだ。ただし4月の設置計画台数も3月2日時点の見通しでは22万台に限られる。3月18日以降に契約変更が成立する分を加えると、当面は契約変更日に間に合わないケースが多発することは確実である。
かりにスマートメーターの設置が契約変更日に間に合わなかった場合には、契約変更日以降の電力使用量を従来のメーターで計測して電気料金を算定する方針だ。新しい契約に対する料金の差が発生するが、その処理方法については現時点で明確に説明していない。
東京電力は3月24日にウェブサイトに掲載したお詫びのメッセージの中で、「スマートメーターの設置が遅延していることにより、需要家の皆さまに不利益が生じないよう、最大限考慮してまいります」と記載した。料金の差額に対する補てんは避けられない状況だ。
一方で東京電力の小売部門による新メニュー移行分の対応については報告書の中で触れていない。スマートメーターの設置工事は効率を考えて地域ごとに実施するため、他社に契約を変更する分と自社内で移行する分を区別して対応を変えることはむずかしい。
東京電力の小売部門が新メニューの契約件数を増やすほど、他社に契約を変更する分のスマートメーターの設置が遅れることになる。状況によっては小売部門の営業を当面のあいだ自粛する措置も必要ではないか。いずれにしてもスマートメーターの設置が遅れることで、小売全面自由化の目的である健全な競争を阻害している。
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