不良施工はFIT認定取り消しか、太陽光発電設備の安全規制強化:法制度・規制(2/2 ページ)
経済産業省は事故などが増えている太陽光発電設備の規制を強化する方針だ。報告義務の強化や、FIT認定取り消しなども含んだ対策に乗り出していく。
不適切な設計や施工の抑止強化へ
これらの状況などを踏まえ、経済産業省では安全性に対する太陽光発電設備の規制強化を進める方針である。取り組みの中心となるのが「不適切な設計、施工の抑止」である。
まずは不適切な設計や施工がそもそも行われないように、どういう設計や施工が最適であるのかという仕様を明確化する「標準仕様の提示」と「技術基準の再検証」「簡易な安全対策の検討」などを進める方針である。特に早急に実施する必要がある安全対策として「架台、基礎の設計例など具体的な標準仕様を技術基準に例示すること」を検討する。中長期的には、現行技術基準が正しいのかどうかを実証試験を通じて検証する仕組みの構築なども進める方針だ。また、水没時の感電防止や既設設備のパネル飛散防止などに貢献する簡易な安全対策についても手法拡大を進めていくとしている。
さらに、工事計画を要しない500〜2000kWクラスの設備で大量のパネル脱落・飛散を伴う損壊事案が発生したことから同規模の設備設置者に対し「使用前自己確認制度による技術基準適合性確認」を義務付けることを検討する。同規模の設備の使用前自己確認の対象とすることで工事計画対象外の事業用太陽光発電所の内、半数以上の確認を可能とする。
情報収集の強化
報告の強化なども進める。事故報告の対象については「500kW以上の設備損壊が生じたもの」や「発電所構外に著しい影響を与えた事故」となっているが、これらを「家屋と区の損害の有無にかかわらず発電所構外にパネルが飛散した場合は報告義務を課す」と見直す。さらに「一定規模以上のパネルの脱落・飛散が生じた場合にも報告義務を課すことを検討する。
さらにFIT(固定価格買取制度)と連携し、不適切な事案についての抑止力として活用を進める。再エネ特措法(FIT法)の改正法案では、電気事業法などの他法令違反が判明し事業を適切に実施していない場合に「改善命令」や「認定取り消し」を可能とする制度となっている。そのため、FIT法による認定情報などから設備情報や運転状況を把握した上で、設備の損壊が疑われる設備について保安規制当局として立ち入り検査などを行うことで、技術基準不適合事案を把握し、適切な改善を求めていくという。
自主保安の向上に向けた取り組み強化
自主的な保安活動を行っている事業者に対し、取り組みがより広がるようにインセンティブなどを検討する。遠隔監視やビッグデータ分析などを活用し設備故障や不具合の予兆を把握し対処するなど、事業者の自主保安の取り組みを促進。例えば、2000kW未満の設備の大半は電気保安法人や電気管理技術者に対する保守管理業務の外部委託を活用しているが、ICT(情報通信技術)などの活用により高度な自主保安体制を確立している事業者については、電気保安法人による点検頻度を緩和することなども検討する。
これらの取り組みについては、2016年度に実証実験を推進し、必要な措置を取っていくとしている(図5)。
関連記事
- 風力発電に3年ごとの検査を義務化、500kW以上を対象に2017年4月施行へ
経済産業省は風力発電設備の新たな定期点検制度の内容案を発表した。単機500kW以上の設備を対象に、3年ごとの定期検査を義務付ける方針だ。2017年4月からの施行を予定している。 - 急がれる太陽光発電と風力発電の安全対策、定期検査制度の導入も
2013年から2015年にかけて、全国各地で太陽光発電と風力発電の事故が相次いだ。政府は安全対策を徹底するため、発電設備に対する定期検査制度の導入や保安規制の強化に乗り出す。特に事故が頻発している風力発電に対しては2017年度から定期検査制度を適用する方針だ。 - 風力発電の3つの課題−環境影響、安全性、コスト−
太陽光に続いて期待が大きい風力発電だが、本格的に拡大する状況には至っていない。最大の課題は環境に対する影響で、鳥類の保護のために計画の変更や縮小を迫られるケースが増えている。大型風車の落下事故が発生して安全性の懸念もある。洋上風力では建設・保守コストの問題が残る。 - 安全性が気になる水素・燃料電池、普及に向けて規制緩和も進む
水素は人体には無害だが、空気中で爆発する可能性がある。ただし気体の状態では軽くて拡散しやすいため、爆発の条件は限られる。高圧ガスの取り扱いを定めた法律に従って適切に利用すれば安全性は高い。燃料電池に関する規制も数多くあるが、普及促進の観点から見直しが進められている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.