国内初の自治体間再エネ連携、福岡県みやま市と鹿児島県肝付町が地産地消で:電力供給サービス
福岡県みやま市と鹿児島県肝付町は、両エリアで生み出される豊富な再生可能エネルギーを融通し合う自治体広域連携を行うことを発表した。エネルギーの地産地消による地方創生に取り組む。
今回自治体間連携を決めた、福岡県みやま市(以下、みやま市)は2015年3月に日本初の自治体による電力売買事業会社「みやまスマートエネルギー」を設立。既に公共施設を中心として地産地消電力の販売を進めている。さらに同社は家庭用を含む低圧向けの電力販売についても九州全域を対象に「みやまんでんき」として2016年4月1日から提供予定としており、現在準備を進めているところである(関連記事)。
経済産業省の大規模HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)情報基盤整備事業で取り組んできた電力データ利活用での省エネと生活支援サービス提供を進める他、九州大学との実証実験の開始など家庭などへの電力供給における付加価値向上に取り組んでいる(図1)。
一方の鹿児島県肝付町(以下、肝付町)は、日本に2つあるロケット発射場の内の1つである「内之浦宇宙空間観測所」が立地している“宇宙の町”である(図2)。加えて、太陽光・風力・小水力などの発電施設や木質バイオマスによる熱供給施設が稼働しているなど、再生可能エネルギーの賦存量(潜在的な発電能力)が多く、エネルギーの自給自足が可能な地域だと見られている。そのため同町では大隅経済圏のエネルギー中核地域として、周辺自治体との連携強化に取り組んでいる。さらに地域エネルギーに関して電力消費の解析や新たな付加価値の開発など、九州電力と共同による取り組みを進めていく。
肝付町で新電力事業を立ち上げ
具体的な協定案として挙がっているのは以下の7項目である。
- 肝付町で検討する新電力会社に関する事業性評価と立ち上げの支援、運営支援に関すること
- 地域新電力事業を活用した地域活性化・産業活性化に関すること
- FITに頼らない再生可能エネルギーの普及に関すること
- 自治体間連携による再生可能エネルギーの普及に関すること
- エネルギーの地産地消化でより快適で暮らしやすい生活基盤の構築に関すること
- 非常時や災害時でも安心して生活できる住宅サービスの向上に関すること
- 地域新電力事業の広域自治体ネットワーク構築に関すること
連携については、みやま市の協力のもと肝付町がまず新電力事業を立ち上げる。これにより、両自治体間で再生可能エネルギーを融通し合って活用する。例えば、天候や気候などによりどちらかの地域での再生可能エネルギーの発電量が減った場合、もう一方の地域から提供したり、共同調達することにより調達費用を低減したりするような形で連携を進める。
さらに地域資源を活用した雇用創出と住民サービスの向上を目的とした地域新電力事業の円滑な事業運営に向けて地域間・全国のネットワーク化などによる「地域資源で地域が輝くまちづくり」に関係する先導的な取り組みを行うとしている。将来的には、両者間・両地域において、自営線網を構築し「家庭間で再エネを融通できる地域」「災害時も電力供給が可能な地域」などを作っていく方針だとしている。
みやま市では家庭や商店などの需要家が参加しエリアで需給を最適化するシステムの開発を開始する。肝付町は既に町内全域に総延長306キロメートルに及ぶ光ファイバー網が張り巡らされ、ICT(情報通信技術)基盤の整備が行き届いている。これらを活用して地域電力事業の付加価値向上に取り組んでいくとしている。
電力小売自由化に向けては主要な電力会社やガス会社、通信会社や石油会社などが、全国区の料金プラン発表を行い大きな注目を集めた。しかし、ここ最近では「地方創生」などの政策支援などもあり、「電力地産地消」を目指した、地方発の新電力の設立が増えてきている。既にこれらの動きを支援するようなサービスなども登場(関連記事)しており、エネルギーをベースとした地方間協力などにも注目が集まってきている。
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